2,000人を超えるフリーランスと直接つながり、その中から選び抜いた十数人が案件を率いる。株式会社LiKG(リク)の近藤光生さんが組み上げてきたこの仕組みは、彼が掲げる構想の途中経過にすぎない。目指しているのは「フリーランスプロダクション」──芸能事務所のフリーランス版だ。独立直後の半年間、自身もフリーランスとして働いた経験が、その出発点にある。
サッカーしかしてこなかった20歳が、社長になると決めるまで
後期から、ぱたりと行かなくなった
大学時代はまったく勉強していません。1年生のときは、前期こそそこそこ通っていたものの、後期からはほとんど行かなくなり、「このままだと卒業できないよ」と言われるほどでした。学費をどぶに捨てていたと思います。
大学2年生で、心を入れ替えた
大学2年生のときに心を入れ替えて、まずはちゃんと大学に行くところから始めました。それがきっかけで、経営者になるという選択肢を自分の中でより解像度高く見るようになったんです。3年生になる頃には、短期の海外留学に行き、小さなベンチャー企業で長期インターンに入り、経営者になると決めました。
社長の隣に、席があった
とくに長期インターンの経験は大きかったです。インターン先を選んだ理由は単純で、当時社員数名の規模だったからです。社長になりたいなら、社長のすぐ近くで働くのが一番の近道だと思っていました。実際に入ってみると、マニュアルも決まったやり方もまだない時期で、そのぶん社長の隣に席がありました。判断の理由をその場で聞けて、できていないことはその場で返ってくる。厳しさはありましたが、いま振り返っても、これ以上ない距離感で商売を教わったと思っています。
当時はリユース、いわゆる買い取りの会社で、出張買取という業態でした。ウェブマーケティングやSEO、リスティング広告から集客をして、お客さまのご自宅まで出張して、家具や家電、ブランドものなどをその場で査定して買い取るという仕事です。もともと勉強はできず、サッカーばかりしていたような10代だったので、ものを仕入れて価値をつけて販売するというシンプルな流れが、商売とは何かを身をもって教えてくれました。この経験を評価してもらい、新卒で入社することになる株式会社ゼネラルリンクから内定をいただきました。
伸びていた事業が、ある日のアップデートで崩れた
3人目として、半分起業のような部署に入った
新卒で入社したのは、渋谷にあるベンチャー企業の株式会社ゼネラルリンクです。2017年卒として入社し、最初に配属されたのは人材紹介の部門で、不動産業界や建設業界に特化した転職エージェント事業の立ち上げでした。大手の人材紹介会社から転職してきた2人が、半分起業のような覚悟で立ち上げた部署の、3人目としての参画です。
ゼネラルリンクを選んだのは、インターン先とは規模も成長フェーズも違ったからです。複数の事業を展開していて、そこにいるだけでビジネスの勉強になると思いました。その分、社長との距離は少し遠のきましたが、それは納得したうえでの選択です。
最年少でマネージャーになり、そこから落ちた
1年経った2年目には部署異動になり、ウェブ業界で仕事をするようになります。自社でいくつものオウンドメディアを運営するメディア事業部で、会社が買収したメディアに外部のコンサルタントが入っていて、その方からSEOを一から教わりました。売上がどんどん伸びていくタイミングでポジションが空いて、当時もっとも若い年齢でディビジョンのマネージャーになりました。事業責任者として、競争の激しいキーワードでいくつも上位表示を取れたことが、いまのSEO領域の土台になっています。
ただ、順調だったのは長くは続きませんでした。Googleのアップデートで、上位を取れていた主力キーワードが一気に飛んで、流入が激減したんです。特定のキーワードだけでなく、メディア単位で評価が下がりました。ドメインそのものの評価、いまで言うE-E-A-Tの比重が極端に強まったタイミングで、コンテンツの質を上げることに注力していた自分たちでは、大手の競合に太刀打ちできなくなってしまった。
ここで学んだのは、一つの流入経路に依存することの怖さです。目の前の施策をどれだけ磨いても、事業の設計そのものが単線だと、外の変化ひとつで足元が崩れる。施策の巧拙より先に、事業の組み立ての問題だったということです。いまLiKGがSEOだけに閉じず、広告もCRMも制作も含めて支援しているのは、この経験があるからです。
丸5年のあいだに、セールス、ライター、ディレクター、ウェブマーケティング・SEO領域の担当と役割を変えながら、メディアのアライアンス部門の立ち上げとマネジメントを経験し、最後はM&Aにも携わって、独立しました。
固定メンバーでは、できないことがある
2,000人の入口から、十数人を選ぶ
2023年1月に創業し、現在は4期目です。ウェブマーケティングの総合支援とウェブ制作をおこなっています。2期目に年商3倍、3期目に2倍という成長ができました。組織としては、たくさんのフリーランスとパートナーシップを組んでシェアをしている点が特徴です。
在籍しているフリーランスの人材選抜制度として、「マイスター制度」を設けています。IT系・ウェブ系のフリーランスは毎日新規応募が増え続けていて、現在2,000人から3,000人が在籍しています。その中で継続的な取引実績がある優秀層を「共創パートナー」、さらにそこから選りすぐった人材を「共創マイスター」と呼んでいて、共創マイスターがお客さまへの提案からPMまで担い、その配下に課題感に合わせて共創パートナー以上の人材を最適な数だけアサインして、オリジナルのチームを組成します。
2,000人から3,000人の在籍者の中から、継続的な取引実績がある方が314人。(2026年4月現在)さらにそこから選抜した共創マイスターは十数人です。入口は広く、上にいくほど精度が上がる構造になっています。
提案した人が、そのまま実行まで持つ
この体制のメリットは大きく3つあります。1つ目は、お客さまの課題感に合わせて最適な人材をすぐにアサインできる柔軟性です。固定人材だけで支援をおこなう体制だと、稼働リソースやスキルの得意不得意によってどうしてもコミットメントの度合いが変わってしまいますが、業務委託体制であればそこに柔軟に対応できます。2つ目は、選抜済みの人材のみで価値提供をしているため品質が安定しやすいということ。フリーランスと言っても経験値にはばらつきがあるからこそ、自社の選抜制度が効いてきます。3つ目は、戦略だけでなく実務の実行までを一気通貫で支援できる組織体制を持っていることです。
加えて、直契約のみで多重下請け構造を生まないこと、マイスターが提案からPMまで主導することでご提案時と実行時のギャップが生まれないこと、SEOや広告、制作といった個別領域に閉じずに戦略策定から全領域をカバーできることも強みとして挙げています。
支援の流れは、ヒアリングからマイスターの選定、ご提案、チーム編成と進んで、キックオフ後の1か月で戦略を固め、2か月目以降で施策の実行と検証に入ります。その後は隔週と月次の定例でレポーティング。提案書を出して終わりではなく、実行まで一緒に走るところが、他社さんとのいちばん大きな違いだと思っています。
共創マイスターには、大手メディア事業会社出身の事業責任者クラスや、大手代理店出身で月予算数千万規模のアカウントを複数運用していた広告マネージャー、上場SaaS企業出身のフルスタックマーケター、ベンチャー・スタートアップでCMOを務めていた人材などが在籍しています。共創パートナーは今年4月時点で314人で、内訳はPM・マーケターが104人(うちフルスタックのマーケ責任者クラスが27人ともっとも多い)、ライターが142人、エンジニアが22人、デザイナーが46人です。
「良いな」と思った人には、必ず30分会う
これだけの人数のフリーランスをどう集めているのかというと、地道に会い続けることに尽きます。フリーランスのマッチングプラットフォームの活用やSNS、リファラル紹介など手段はさまざまですが、書類選考のうえで「良いな」と感じた方には必ず30分の面談をおこなうことを徹底していて、独立してからの4年間で、累計500人以上と対話をしてきました。
スキルで選ぶと、チームは噛み合わない
組ませた側の、見立ての問題
業務委託であっても、会社の看板を背負って動いてもらうことに変わりはありません。だからこそ、きちんとチームを組成して役割を分けないと、誰か一人に負荷が集中してしまいます。
難しいのは、こちらがスキルセットしか見えていない状態でチームを組んでしまうときです。実力のある方同士でも、進め方の好みや得意な距離感は一人ひとり違う。そこを把握しないまま組ませてしまうと、噛み合わないまま進んでしまいます。これは組んだ側の見立ての問題で、事前にどれだけ相互理解の時間をつくれるかに尽きると思っています。
スキルがあれば生き残れる、という世界ではない
独立して半年、自分もフリーランスだった
今後のビジョンとして、いろいろな場でお話ししているのが「フリーランスプロダクション」です。芸能人が所属する芸能事務所のフリーランス版を、世の中に必要なものとしてつくりたいと考えています。
独立してからの半年間は、自分自身もフリーランスとして働いていました。そこで痛感したのが、一人だと受けられる仕事に限界があるということです。声をかけていただいても、規模の大きい案件や、SEOと広告と制作をまたぐような依頼になると、一人では受け切れない。スキルがあるかどうかとは別のところで、できることの上限が決まってしまいます。
いまも多くのフリーランスの方とパートナーシップを組む中で強く感じるのは、スキルがあれば必ず生き残れる世界ではないということです。案件に巡り合えるかどうかや、スキルはあっても営業が苦手であるなど、一人でできることには限りがあります。生成AIによって一人がこなせる幅は急速に広がっていますが、事業規模が大きくなるほど、いろいろな人の知見やスキル、協力が必要になってくるという実感があります。
2018年に厚生労働省がモデル就業規則から副業禁止の規定を削除し、副業・兼業の促進に関するガイドラインを示したことをきっかけに、フリーランスという働き方は10年前と比べて世の中に受け入れられてきている一方、フリーランスが働きやすい環境やインフラはまだ整っていないとも感じています。だからこそ、フリーランスとしての誇りを持ちながら、お互いを尊重しつつ、苦手なことをカバーしてもらい、自分がやるべき仕事に注力できるようなインフラをつくりたいと考えています。
学びも、繋がりも、仕事も、ひとつの場所で
フリーランスプロダクションには、さまざまな機能が必要だと考えています。オンラインスクールのような学びの機能、税理士や弁護士などの士業に相談できる環境、案件マッチング、マッチングした案件でのチーム編成、情報交換ができるコミュニティ機能。
ただ、ここに挙げたものが全部というわけではありません。会社員なら当たり前に受けられる健康診断を用意したり、チームで目標を達成したら飲みに行ったり、そこから旅行の企画が立ち上がったり。機能として整えるものだけでなく、そういうことまで自然に起きる場所になったら面白いと思っています。
いまはこれらが点として存在していますが、1つのプロダクションとして統合され、そこに在籍すれば学びも繋がりも仕事も得られ、自分自身のブランドも磨いていける。そういう場をつくることが、いまの目標です。
編集後記
今回、株式会社LiKGの近藤様に取材をさせていただきました。2,000人を超えるフリーランスと向き合いながら、その一人ひとりが力を発揮できる場そのものをつくろうとされている姿が印象的でした。「フリーランスプロダクション」という構想は、これからの働き方を考えるうえでもとても示唆に富むものだと感じます。今後の展開が楽しみです。貴重なお話をありがとうございました。