パソコンサポートからeスポーツの世界へ
個人向けのパソコンサポートからのスタート
創業当時は、個人向けのパソコンサポートをしていました。2005年から2007年くらいまで、インターネットプロバイダの訪問設定とか、そういったことをやっていましたね。
しかし、それだけでは事業として続けるのが難しくなり、ネットカフェのネットワークサポートの仕事をいただくようになりました。店舗内のネットワークの保守ですね。多い時には全国90カ所ほどのネットカフェから、仕事を請け負っていました。
それが一つの事業の柱になっていたんですけど、徐々にネットカフェ自体が減少してきて、その案件もどんどん減ってしまったんですよね。
秋葉原に作ったオンラインゲームの専用スペース
そんななかで、eスポーツコーナーというか、当時はまだオンラインゲームと言われていたんですけど、ゲーム専用のコーナーを作るインターネットカフェがいくつかあったんですよね。そこに関わらせていただいたのが、今の事業を始めるきっかけでした。
ネットカフェの個室で漫画を読んだり、寝転がったりするのではなく、ゲームをやるための専用の場所が、これからどんどん増えるんじゃないかと思ったんです。
それで2012年に、秋葉原のネットカフェにオンラインゲーム専用スペースを作ったんです。これがすごく評判がよくて、やはり今後は、こういうのがさらに増えるだろうと感じました。
韓国での衝撃からeスポーツ施設のシステム開発へ
実は、こういった専用スペースの本場は韓国なんです。ゲームセンターのような所なんですけど、それを見に行ったら日本と全然雰囲気が違うんですよね。もっと活気があって、システム化されていました。
ファストフードのような仕組みといいますか、いろんな部分でシステムそのものが違ったんです。これはいずれ日本にも入ってくるだろうと感じて、日本用の管理システムを2015年から作り始めました。
それができるタイミングが2018年だったんですが、後にいわゆる「eスポーツ元年」と言われた年ですね。そこでeスポーツという言葉が本格的にできて、日本の中でeスポーツのための施設もいくつも出てきた頃です。
そこでちょうど弊社の管理システムが完成したので、本当にジャストタイミングでしたね。うまく導入することができました。今に至るまでのeスポーツ流行の流れに、うまく乗れた感じです。
eスポーツ施設の支援から見えてきたもの
システム開発からコンサルへ
今の事業は、eスポーツ施設のシステムを作ることから始まり、これまで130カ所以上のシステムを手掛けています。これだけの数の施設に関わっていると、「どんなお店にすれば人が入るのか」といった経営の課題にも、たくさん向き合うことになるんですよね。
それでシステムを導入するだけではなく、施設運営そのものをコンサルティングする立場に、自然と変わってきました。それで現在は、eスポーツの総合コンサル事業をメインにやっています。
大学からの相次ぐ引き合い
その流れで、最近増えているのが大学からの依頼です。近畿大学・阪南大学・金沢工業大学・芝浦工業大学・神奈川工科大学、そして今年は江戸川大学などにも、eスポーツ施設を導入させていただきました。
弊社から声をかけることもありますが、大学側から問い合わせをいただくケースの方が多いですね。それは近年、eスポーツがスポーツとして認められるなかで、脳の動きやホルモンの変化といった研究に活用されているからです。
引きこもりやニートと呼ばれるような人たちが、eスポーツを通じて社会との接点を持ち、社会性を身に付けていくための研究もされています。そうした活用の幅が広がっていることが、大学でeスポーツ施設の導入が進んでいる理由の一つです。
開発の壁―ライセンスをめぐる交渉
韓国式が日本では通用しない
システム作りで一番苦労したのは、規約の問題でした。パソコンにはマイクロソフトの規約があって、ゲームにも利用規約がある。韓国でOKなことが、日本ではNGということがたくさんあったので、本当に大丈夫かなと思っていた時期がありました。
例えば、韓国では「シンクライアント」といって、パソコンにSSDやハードディスクを積まない状態でWindowsを起動し、提供することが認められています。
しかし日本では、それが認められておらず、ライセンスの縛りがとても厳しいんですよね。海外のシステムをそのまま持ってくることができず、日本用に作り直す必要がありました。日本向けに価格も調整しつつ、ライセンスがきちんと通るようにするのは大変でしたね。
eスポーツ業界が抱える課題
「儲からない」という誤解
eスポーツ業界の課題は大きく二つあります。一つは施設側の課題で、eスポーツ施設は「儲からない」というイメージがついてしまっていることです。
実際には、きちんと運営しているお店は何年も続いています。ただ閉店すると、どうしても目立ってしまうんですよね。「絶対に成功する方程式」ができていない業界だからこそ、場所ごとに工夫を重ねていかなければいけません。
もう少しeスポーツ施設の有効性というか、優位性を示すことが大事だと思います。例えば、ゲームセンターのように遊ぶだけではなく、フリースクールや高齢者の交流の場とするなど、いろいろな使い方を広める必要があります。
施設の利用者が実際に会って楽しめるような、eスポーツならではのオフラインの魅力を広めていくべきだと思います。
スポーツとしての価値向上が必要
もう一つは、業界全体の課題です。eスポーツという名前は広まりましたが、まだゲームとの境というか、区別がされていないところがあります。
それは良い面もあるんですが、もう少しスポーツとして扱われていかないと、社会的地位は上がりません。「ただゲームをやっているだけでしょう」と見られてしまうことが、まだまだ多いんですよね。
だからこそ業界としては、eスポーツを代表する魅力的な選手や、人材を育てていく必要があります。極端な例でいえば、大谷翔平選手のような誰からも好かれるような人材を育成して、eスポーツの価値の向上を図ることが大事ですね。
施設の課題と業界の課題、この両方を解決できたときに、eスポーツの未来は今以上に明るくなると思っています。
埼玉支部代表として、これから
日本スポーツ協会との連携
今年の7月から、日本eスポーツ協会の埼玉県支部の代表を務めることになりました。日本eスポーツ協会は、日本スポーツ協会に加盟しており、全国各地に支部を設けながらeスポーツの普及に取り組んでいます。
今後は支部の代表として、全国の組織や行政・企業・学校などと連携を取りながら、さらにeスポーツを広げていきたいと思っています。
学生へのメッセージ|挑戦しなければ道は開けない
若いうちこそ挑戦してほしい
大学で非常勤講師をする機会もあり、学生に伝えていることがいくつかあります。まず、自分の将来の方向性を見つけるときは、守りに入らず、必ず挑戦してほしいということです。弊社に入って来る人たちにも、よく話すのですが、挑戦しなければ道は開けません。
特に、eスポーツは若い人たちが主体になっている業界です。だからこそ、ありきたりではない新しいアイデアをどんどん提案して、実際に挑戦してもらいたいと思っています。
世代の壁を越える熱意が大切
一方で、eスポーツ業界でお金を動かしているのは、40代後半から50代の人たちです。私ももうすぐ60歳になりますが、若い人たちとの考え方の差は、とても大きいと感じています。その差を乗り越えて自分の考えを伝えるのは、とても力が必要なことです。
ただ、そこで「もうだめだ」と諦めてしまったら、その時点で終わってしまいます。熱意を持って伝え続ければ、必ず相手にも伝わります。これはeスポーツの業界に限らず、どの業界にも共通することだと思うので、忘れないでほしいですね。
編集後記
今回のインタビューでは、望月さんがネットカフェのサポートから、eスポーツに至った道のりに面白さを感じました。同時に、ライセンスに関する交渉などのエピソードからは、新しい市場を切り拓く大変さが伝わってきます。
また「挑戦しなければ道は開けない」という言葉は、就職活動やインターン先を選ぶ私たち学生にも、そのまま当てはまる言葉ではないでしょうか。私自身も、これからの進路を考える上で、まずは一歩踏み出して挑戦する姿勢を大切にしたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。