インタビュー

テニスを通じて人生を豊かに——「先生」ではなく「サービス業のプロ」であれ

PROFILE
株式会社テニスラウンジ 代表取締役
江口 夏樹

テニスに夢中だった学生時代

勉強よりテニス一色の青春

高校時代は、勉強そっちのけでテニスに熱中していました。強豪校というわけではなかったので、特別すごい戦績があるわけではないんですが、とにかく好きで、毎日テニスに明け暮れていた、そんな青春でしたね。

大学では精神保健福祉を専攻しました。これから高齢化社会が来るし、福祉を学んでおけばずっと食べていけるだろうなというのが正直なところで(笑)。もともと人がとても好きだったので、人に携わる仕事がしたいという気持ちもありました。ただ、実習を重ねるうちに、悩んでいる方に寄り添うと自分も一緒になって悩んでしまうということに気づいて。自分の体質的に、これを仕事にするのは難しいなと感じるようになりました。

新卒3か月で気づいた「天職」

新卒では上場企業の営業職に入りました。でも3か月で辞めてしまっています。当時の自分は若かったと思うんですが、そこで働いている方の姿が将来の自分の姿になっていくと思ったとき、「ずっとこれを続けていくのか」と違和感を覚えたんです。

ちょうどその頃、週に一度だけテニスのアルバイトコーチをしていました。物を売る仕事をしながら、自分自身がスキルを磨いて会員さんに尽くせばその分喜んでもらえるというのが、本当にいいなと思って。「やっぱりテニスコーチをやろう」と決めたのが、今の原点ですね。

インストラクターから代表へ

ザ・生え抜きのキャリア

弊社に入ったのはインストラクターからです。その後、ヘッドコーチ(他の業界でいう店長)、複数店舗を見るエリア長、さらに統括、人事、マーケティング・広報と経験して、役員、副社長を経て今の代表という流れです。本当に段階を踏みながら、いろいろな経験をさせてもらいました。

「期待以上でお返しする」という軸

代表になりたいとか、出世したいという強い野心があったわけではないんです。その場その場で出会った方に全力で向き合って、たくさん喜んでもらうという積み重ねが今になったという感じで。

私自身の根っこにあるのは、「期待をされたら、その期待以上のものでお返しする」という気持ちです。私と関わってがっかりしたという方を出したくないという思いは、今も変わっていません。

「先生」ではなく「サービス業のプロ」

創業者から受け継いだ社訓

弊社の一番の強みは、創業者から受け継いできた社訓にあります。テニススクールなので「先生」というカテゴリーには入るんですが、私たちはそうではなく、「サービス業のプロであれ」というのを一貫して言い続けています。

コーチってみんなから「コーチ!コーチ!」と言われると気持ちよくなってしまって、ボールを打ってもらう時間よりも自分が説明・指導する時間が長くなることがあるんです。でもそれは本質じゃない。一球でも多く打ってもらおう、とにかく楽しんでもらおう、というところをめちゃくちゃ大事にする。それをみんなが体現してくれています。

日本一の店舗数、東海から全国へ

本社は名古屋で、東海地方を中心に、全国 57 店舗でテニススクールを展開しています。おかげさまで店舗数は日本一になりました。フットサル、ベースボール、卓球、ヨガなど、テニスを軸にしながら、ご縁や事業の引き継ぎ(施設運営の移管)を通じてさまざまなスポーツ事業も広がっています。「ラウンジ(社交場)」という名前の通り、スポーツを通じて人が集まれる場を提供したいというのが私たちの思いです。

最近では、ストレッチのスポーツジムもスタートしました。長くスポーツを楽しんでもらうために、筋トレの基盤となる体の柔らかさや姿勢をトータルでサポートしていきたいという考えからです。

テニスは「究極のヘルスケア事業」

コペンハーゲン調査が証明した9.7年

私たちが今強く打ち出していきたいのが、テニスをヘルスケア事業として認識してもらうということです。デンマーク・コペンハーゲンの市民約 8,600 人を 25 年間追跡した研究(2018 年『Mayo Clinic Proceedings』掲載)によると、テニスを習慣にしている人は運動習慣のない人と比べて平均寿命が 9.7 年長いことが明らかになっています。8 種目のスポーツの中でテニスが断トツの 1 位です。これは本当にもっと業界全体に伝えていかないといけないと思っています。

弊社には 4 歳から 90 代の方まで通ってくださっています。ジムはすばらしいですが、一人で頑張るので継続率に課題があることもある。テニスはコーチがいて、タイムテーブルがあって、「週に一回ここに来る」という約束ができる。人間の弱さをカバーしてくれる仕組みが自然に備わっているんですよね。だから継続率がいい。

単価を上げることで、サービス業の価値を変える

今、会員さんの単価でいくと大体 1 万円前後なんですが、これを 2 万、3 万円払ってでも健康になれる・幸せになれると思ってもらえるようにしていきたい。サービス業の価値と待遇を、これからの世代と一緒に引き上げていきたい。そのためにできることはとことんチャレンジしていくつもりです。

若者へのメッセージ

「人じゃなきゃ嫌だ」と言われる仕事に価値がある

これはポジショントークになってしまうかもしれないんですが(笑)、これからは「人じゃなきゃ嫌だ」と思ってもらえる仕事にすごく価値が出てくると思っています。AI も発達して、球出しマシンなんかも出てきています。でも球出しマシンに「ナイスショット!」と言われてもちょっと味気ないですよね。「昨日より上手になりましたね」という声かけや、コミュニティの場があってこそ、会員さんは続けてくれる。

自分自身が商品の仕事は、やった分だけ喜んでもらえて、それがやがて自分に返ってくる。自分らしさを出したい、人からの「ありがとう」を身近で感じたいという方には、私たちのような仕事は本当に相性がいいと思いますよ。

テニス未経験でも、扉は開いている

「テニスが上手じゃないと入れないんじゃないか」と思う方もいるかもしれませんが、技術はポートフォリオの一部にすぎません。研修を通して人との接し方や指導の方法はしっかり身につけてもらえるので、フロントのインストラクターでも、それほど心配しなくていいです。

また、弊社は今フェーズが一つ上がってきているところで、フロントだけでなく、広報やバックオフィス、経営を支える側の募集も強化していきます。弊社の思いに少しでも共感していただけたら、ぜひ一度扉を叩いてほしいです。学生アルバイトもめちゃくちゃいい経験ができると思いますので、気軽にアクセスしてみてください。

編集後記

江口さんのお話を伺って、一番印象に残ったのは「社長になりたいという野心はなかった」という言葉でした。出世を目標にするのではなく、目の前の人を喜ばせることを積み重ねてきた結果として、今の立場がある。サービス業の本質を体現されているようで、すごく説得力がありました。「テニスは寿命が 9.7 年延びる」というエビデンスも衝撃的で、健康ビジネスとスポーツの交差点にこんなに大きな可能性があるのかと気づかされました。サービス業の給与水準を変えていくという志も、就活生として非常に刺さる言葉でした。2026年名古屋でこの名前をつけたイベントを実施するとのことですがPlay for Life ——テニスを通じて人生を豊かに」——その言葉が、インタビュー全体を通じてずっと響いていました。