秋田県との出会いは、一本の誘致ツアーから
経営が苦しい時期の視察
株式会社リベンリ秋田は、神奈川県藤沢市にある株式会社リベンリの子会社として立ち上げた会社です。なぜ秋田だったのかというと、始まりは2022年ごろに遡ります。秋田県仙北市から「サテライトオフィスの誘致ツアーをやるので視察に来てくれませんか」というお話を、親会社のほうにいただいたんですよね。
当時のリベンリは、正直あまり経営状況がよくありませんでした。何か打開しないといけない、地方に仕事と採用を探しに行こう。そういう目的もあって、初めて秋田県に足を踏み入れました。それが秋田との最初の接触になっています。
いたく気に入って、移住を決めた
ツアーには私と、総務営業をやっていた者との2名で行きました。その時に私が秋田県をいたく気に入ってしまいまして。もうここに引っ越して会社をつくろう、というくらいの前提で動きはじめたんです。
そこから半年ほどかけて、秋田県内の仕事の状況だったり、採用の状況だったりを洗い出しました。地方が抱えている課題も一つひとつ見ていって、「なんとかやっていけるかもな」と。実際に会社を立ち上げたのが2023年になります。
市役所の仕事を肩代わりする
親会社は自社製品を持ちながら、お客さまのシステム開発をおこなう会社です。ですので前提としては、秋田のほうもシステム開発でやっていくつもりでした。ただ、秋田県内の民間企業さんからシステム開発を受けるのは、やはり厳しい状況で。
会社を設立したときに仙北市さんから仙北市誘致企業認定第1号の認定を頂戴できたので、市役所の中でやりきれないお仕事を弊社が肩代わりしよう、と手を挙げさせてもらったんです。そこからシステム開発以外の領域も、秋田で始めました。
今も続いているのが、仙北市の移住体験支援業務です。仙北市への移住を考えている方に、事前の情報収集のために来ていただく。その運用やアテンド、SNSを使った募集などを弊社が担当しています。
クマダスが生まれるまで
もちろんシステム開発という本流は変わっていません。たまたま自社製品として持っていたクマの出没注意情報を喚起するアプリを県に持っていったところ、県には同じようなシステムがすでにあって。ただ、そのシステム自体が古くなっているので刷新したい、というお話になりました。そうして2024年の夏ごろに出来上がったのが「クマダス」です。
運用そのものは弊社ではなく秋田県がおこなっていて、私たちはシステムの維持を担っています。県が一度目を通してから公開する流れなので、公開まで多少のラグはあるんですよね。そのぶん、信用のおける情報を出すことにかなり気を使って運用されているようです。
今は3本柱で動いている
オンラインの教育事業を手がけていた時期もありましたが、もともと個人事業として運営していた者に事業の主体を戻したため、会社としては一旦手放しました。現在はパーソナルトレーニングのフィットネス事業と、システム開発、そして地方創生。この3本が大きな柱になっています。
人と資金は、ずっと続く悩みの種
民間の需要を喚起できない
苦労しているのは、人がどうしてもいないこと。人材不足もそうですし、民間のシステム開発の需要をどうしても喚起できないんです。秋田県内で仕事をしますよ、という営業はけっこう大変だなと思っています。本当は行政の仕事だけでなく民間の仕事をするのが健全だとは思うものの、なかなかそうはいかないという感じですね。
入金は年度末まで待つ
行政のお仕事にも難しさがあります。作業をしてからお金が入ってくるまで、時間がかかるんですよね。すべての事業が終わってから入金という形になるので、必ず3月末に締めて4月に入ってくる。それまでの期間を運転資金として、体力を維持しておかないといけません。
概算払い、という前払い的なお支払いをお願いできるケースではお願いする場合もありますが、基本的には事業が終わってからの入金になるので、それまで頑張る必要があります。
現状維持は衰退
とはいえ、現状維持は衰退だと思っているんですよ。何か新しい施策を打って、売上の幅も仕事の幅も広げていかないといけない。
ビジョンとして掲げているのは、すごく俗な言い方をすると、仙北市で一番社員を抱えるIT企業になることです。「ITの相談をするならリベンリ秋田さんだね」と知っていただける存在になれるように、身のあるシステムを作っていけたらいいなと考えています。
ヤギ3頭は、まだペット
新しいことは基本的にいつも考えています。ただ、事業にできていない部分も実はあって。会社でヤギを3頭飼育しているんですよ。今は本当にただのペットになっているので、ヤギとのふれあいや餌やり体験を早く事業化したいなとは思っています。
動物愛護法などの手続きが必要で、なかなか先に進められていないのが現状です。飼育自体は1年以上おこなっているので、最低限クリアしないといけない条件はある程度クリアできてきました。あとは実際にやるだけ。それでも冒頭でお話ししたとおり人がいないので、「誰がやるの」という話になってしまう。やりたいことはたくさんあるものの、人と資金をどうしようか。そこは日々考えていますね。
自立して生きていく
高校は働きながら夜に通った
私、実は大学を出ていないんです。高校も、昼間は働いて夜に通っていました。学校が終わるのが夜9時ごろ。そこから同級生4、5人と、第一京浜をバイクでぶっ飛ばして帰る。週末はツーリングに行く。そんな高校時代でした。
将来のことは、正直あまり考えていませんでしたね。ただ、年齢層の違う人たちが学校にはいたので、いろんな層の方に会えていたなという感じはします。人より早く社会に出ていたぶん、いわゆる学生気分は早い段階で抜けただろうなとは思います。
「こうあらねば」を持たない
終身雇用みたいな時代はとっくに終わっていて、自分に合うところ、合わないところを渡り歩きながらキャリアを積んでいく時代になっているかなと思います。だから、こだわりを持たずに、というと少し語弊はあるものの、「自分はこうあらねばならない」をあまり持たずにいるのがよいのかなと。その場その場の流れに乗って生きていく。私はそれでいいと思うんですよね。
大事なのは発想とアイデア
今はAIもできて、何かアイデアがあればすぐ仕事にできると思います。もっと極端にいえば、会社に所属しなくても稼げる方法はいくらでもある。だからこそ大事にしてほしいのが、発想であり、アイデアです。
その発想とアイデアを生かしてくれそうな会社を探して就職する。あるいは自分で起業する。どちらでもかまわないので、自立できるキャリアを積んでいただくのがいいのかなと思います。
「これだけ稼ぐから」と言える人が来てほしい
弊社は基本的にめちゃくちゃ自由な会社です。ほとんどフルリモートですし、やりたいといったことはやってもらえます。とはいえ、資金をどうするのかという話は必ずついてまわるので、「私はこれだけ稼ぐから、これをやらせてください」という学生さんが現れたら、弊社としては大歓迎ですね。
自立して生きていきましょう。それが私からのメッセージです。
編集後記
秋田を「いたく気に入って」半年で会社設立まで持っていく。この身軽さが、櫻井さんのお話の芯にあるものだと感じました。私自身も学生のうちから小さく事業を動かしていて、資金と人の問題には日々ぶつかっています。だからこそ、ヤギの事業化が進まない理由を「人がいないから」と率直に語ってくださったことが印象に残っています。
やりたいことと、それを支える資金。この2つを結びつけられる人であれば、学生でも歓迎されるというメッセージは、就職か起業かで迷っている同世代にこそ届いてほしい言葉です。流れに乗る勇気と、自立するための発想。どちらも今すぐ持てるものだと教えていただきました。