学生時代、没頭できるものが何もなかった
私の最終学歴は高校卒業です。学生時代は、これといって何かに没頭していたわけではありませんでした。スポーツも勉強も、どちらかというと得意な方ではありません。ファッションやダンス、サブカルチャー的なものにも広く浅く手を出してはいたものの、「このままではいけない」という思いを抱えながら過ごしていたと思います。
上場企業を辞め、情報発信の道へ
学生時代とは違い、社会人になってからは「5年後・10年後、こうありたい」というビジョンがありました。世界中を飛び回りながら仕事をしたい、という漠然とした思いです。当時勤めていた会社でずっと働き続ける未来を考えたとき、その働き方で生きていく人たちがどんどん増えて、成功している人も出てきているのを目の当たりにしました。
ブログを書いたこともなければ、情報発信のやり方もわからない。インターネットに詳しいわけでもありませんでした。それでも自分でホームページを作ってみたり、仕事の休みの日や空いた時間を使って勉強したりしているうちに、情報発信の楽しさに目覚めていきました。「これでやっていきたい」と、だんだん腹が固まっていったのです。それが、退職を決めたきっかけになりました。
自己満足の発信から、人の役に立つ発信へ
個人事業主として情報発信をはじめた最初の一年は、うまくいきませんでした。お金もほとんど稼げません。それでも続けていくうちに、少しずつノウハウや知見がたまっていきました。
一年ほど経ったころ、「何を軸に発信していけばいいのか」がなかなか定まらず、迷いもありました。そこで、周りで困っている人は誰だろうと考えたのです。それまでの私は、自分のやりたいこと、発信したいことばかりを発信する、いわば自己満足の状態でした。視点が切り替わったのは、自分が知識を提供したことで喜んでくれる人は誰だろう、と考えるようになってからです。
アフィリエイトで月百万円を超える
行き着いたのは、コミュニケーションに悩んでいる方たちでした。恋愛相談に乗ったり、アプローチの仕方を伝えたりするうちに、当時流行っていたアフィリエイトの形で、恋愛系の情報発信にたどり着きました。月三万円、五万円、十万円、二十万円と少しずつ収入が増え、三年後には月百万円を超えるまでになりました。アルバイトをしながらの活動から、独立・起業へとシフトしていったのです。最初から起業を目的にしていたわけではなく、なりたい自分の姿を実現した結果として、起業に至りました。
夢を叶えても、埋まらなかったもの
サラリーマン時代にぼんやりと抱いていた「世界中を飛び回る」という夢は、月百万円を超えてから次々と実現していきました。五年以上、いろいろな場所を旅しながら仕事をする日々が続きました。
けれど、それだけでは幸せとは言い切れませんでした。人からは「楽しそうだね」とよく言われましたが、自分の中にはどこか寂しさがありました。理由を考えると、仲間があまりいなかったのです。旅は、誰と行くかによって楽しさが大きく変わります。自分一人で進めていくよりも、仲間やお客様と一緒に成長していきたい。そう思うようになり、方針を変えて、拠点を持ちながら活動する道を選びました。
北海道千歳市を拠点に、二つの事業を展開
現在は北海道千歳市を拠点に、大きく二つの領域を支援しています。ひとつは、ホームページ制作やSEO、情報発信などのWeb集客支援です。もうひとつは、企業や団体に向けた生成AI研修・導入支援と、それにともなう業務改善です。
どちらの事業も、お客様が抱えている思いや強みを整理させていただくことに軸があります。それぞれが抱えていて、なかなか声にならない思いを言語化し、形にしていく。その手段がWebサイトであり、生成AIでもあります。
勝った瞬間が、一番のやりがい
弊社の経営理念は「関わる人たちの成長や進化に貢献し、ハッピーエンドを描く」というものです。ただ悩みがクリアになって終わり、という単純なハッピーエンドを目指しているわけではありません。事業には波があるものです。お客様と共通の目標を掲げ、そこに向かって一緒に歩んでいく中では、失敗も、困ることもあります。そうした過程を経て、共に目標を達成できたときが、一番のやりがいを感じる瞬間です。
AIは使うが、決断は渡さない
生成AIの市場には、国家プロジェクト単位で社会の注目が集まっています。そのなかで私たちが掲げているのが、「AIは使うが、決断は渡さない」という方針です。人間がやるべきことと、生成AIに任せるべきことをしっかり区分けしなければ、AIに決断を委ねる社会になりかねないと考えています。
AIの答えを信じて失敗した
生成AIは日々進化していて、もっともらしい選択肢を提示してくれます。ただし、正しい入力をしたとしても、必ずしも正しい答えが出るとは限りません。
以前、あるプロジェクトで、市場リサーチをもとに複数のアプローチを生成AIと壁打ちしたことがあります。「成功確率が最も高い」と提示された案を採用したのですが、結果は全くの失敗で、時間もお金も大きく無駄にしてしまいました。そのときに得た教訓は、自分の経験値やお客様の状況を無視した決断をしてしまったということです。一般論としての答えは確かにそのプランでしたが、本当の答えは、確率が低いとされていたところにありました。
この経験から、決断の軸だけは、あくまでAIを参考材料としながらも、自分とお客様が抱えている根っこの部分につながるものでなければならないと、改めて感じています。数値だけでは測れない部分です。
北海道のAIリテラシーを引き上げたい
北海道では、まだまだ生成AIに関するリテラシーが十分に浸透していないと感じています。AIのもっともらしい答えをそのまま採用してしまったり、ツールを使って部分的な最適化だけを目指してしまったりして、うまくいかない企業様も少なくありません。まずは自社の業務をきちんと棚卸しして、どこからどこまでをAIに任せるのか。全体を見据えたうえで整理することが必要です。そうした支援を通じて、北海道の事業者様のAIリテラシーを引き上げることに貢献していきたいと考えています。
なりたい自分に、貪欲に向かっていい
学生の方には、まず「なりたい自分」「ありたい自分」を諦めずに描いてほしいと思います。十年後、二十年後という遠い未来でなくても構いません。一年後、三年後にどうありたいかを考え、そこに向かうロードマップを引いていく。たとえ道筋がはっきり見えていなくても、そうやって歩んでいくうちに、自然と決断もその方向に向かっていくものです。
自分が若いからと遠慮する必要もありません。相手が社長であろうと、目上の方であろうと、自分の思いはどんどん伝えていけばいいと思います。それを理解し、受け止めてくれる人こそ、大切にすべき人だと思うからです。まずは、なりたい自分の姿を、貪欲に目指していってほしいと思います。
何もしないのが最も良くない
私の学生時代は、没頭してたものが何も無かった。今、学生の方たちに伝えたいのは、まさにこの経験から来ています。何かに打ち込めなくても、横に広げていろいろなことをしてみればいいと思うのです。無駄なことをたくさんしてもいい。そうしていく中で「これ、いいんじゃないか」「これ、面白いんじゃないか」と、自分の存在価値を見いだせるヒントが見つかるものです。逆に、一番よくないのは何もしないことです。去年と同じことをして、去年と同じことを言っている。それには、注意した方がいいと思います。
編集後記
今回、上田さんのお話をお伺いして、印象に残ったのは「AIは使うが、決断は渡さない」という言葉です。便利なツールに頼りたくなる場面ほど、自分の経験や相手への理解を大切にする姿勢が問われるのだと感じました。学生時代は無趣味だったという上田さんが、行動を重ねながら少しずつ道を切り拓いてきた過程には、勇気をもらいます。私自身も、なりたい自分に向けて貪欲に動いていきたいと思います。