二代目としての原点
父は調律師、母はピアノ講師
私は株式会社福山楽器センターの二代目です。父がピアノの調律師で、母がピアノの講師をしていて、そこからこの会社は始まっています。私自身は大学で情報処理を専門的に学んでいて、本当はプログラマーになろうと思っていました。
都会のスタジオに衝撃を受けた
大学時代は千葉県のほうに住んでいて、ずっとバンドをやっていたんです。でも、地元では練習スタジオはあまり充実していなくて。そんな中、部屋数も設備も充実しているスタジオを見て、これを地元でもやりたいと思ったのが最初のきっかけでした。
当時は現在と同じく、就職については学生側が売り手市場でした。特に、情報システム学科卒となると、どこにでも就職が出来るほどです。大して成績が良くなかった私にも大手ゲーム機メーカーへとお話がありましたが、起業することで頭がいっぱいだったので、お断りしました。結果、その2年後に世界中でヒットするゲーム機がその企業から発売された時は、失敗したかな。と今でも思うことがあります。(笑)
帰郷、そして「反乱」
社員がほぼ全員辞めてしまった
地元に戻ってスタジオ事業をある程度やっていたんですけど、1年で社員がほぼ全員辞めてしまうという事態が起きました。何も知らないまま、ピアノの販売をイチから立て直すような形になったんです。
通販に懸けた
1999年ごろからインターネット販売が良いらしいということで始めたのが、今につながっています。今は総合楽器をあつかう通販事業「楽器のことならメリーネット」が売り上げの97%を占めていて、店頭よりもECが中心になっています。
広告費ゼロの戦略
11カテゴリーの専門スタッフ
うちは広告費をまったく使っていません。この1年間も広告費はゼロです。商品は全部で11カテゴリーに分かれていて、それぞれに専門スタッフがついています。メーカーのカタログをそのまま載せるのではなく、セットでの提案商品を中心に見ていただけるようにしているので、コンテンツの厚みが他社より充実していると思います。
検索対策はコンテンツ次第
検索対策は、コンテンツさえしっかり作れば自然と上位に行きます。楽天も同じで、商品が売れれば売れるほど上位に表示される仕組みなので、それをうまく活用しています。広告に頼らずに、お客さまから気軽に問い合わせをいただいて、どう使いたいか、どんな環境を求めているかをヒアリングしたうえで柔軟に提案する。ここがうちの一番の強みだと思っています。
楽器業界を変えたい
楽器好きは仕事に向いている
私も楽器が大好きで、今もバンドをやっています。楽器を続けている人は、自分で試行錯誤しながら何度も最適化を重ねる経験をしているので、じつは仕事に向いている人が多いと思っています。中小企業の経営者のみなさんには「楽器をやっている人をどんどん雇ってください」と伝えたいくらいです。
他社を支える存在になりたい
EC事業を20年やってきたなかで培ったノウハウやしくみづくりを、これからECに力を入れたい企業さんのお手伝いに活かしたいと思っていて、今新しく事業を立ち上げようとしているところです。中小企業は1社だけではなかなか成り立たせていくのが難しいので、目の前の事業をしっかりやることで、他社の役に立つ存在になれたらいいなと思っています。
コロナ禍でEC市場に参入してくる業者がとても増えて、需要が伸びる以上に競合が増えてしまったのが、今の業界の状況だと感じています。
社員と向き合う
とにかく全員と話す
社内では自分がムードメーカーになって、とにかく全員と話をするようにしています。話をすれば、元気があるかないかもわかりますし、仕事の様子もつかめます。うちは若いメンバーが多く、新卒が入っても辞めませんし、会社からもなかなか帰りたがらないので、学校のような雰囲気があります。この雰囲気は大事にしていきたいと思っています。
内製化へのこだわり
社員は全員正社員で雇用していて、業務委託には頼っていません。画像編集やホームページの作り方も全社員に教えていて、全員が作れるようになっています。楽器屋でここまで内製化しているところは、ほぼないと思います。
若い世代へ
柔軟な気持ちで視野を広く
学生のうちから夢を持つのはなかなか難しいと思いますが、柔軟な気持ちで、広い視野を持って人生に挑んでもらいたいです。仕事は人生のなかでとても大きな時間を占めるものになるので、人としてどうかということが維持できないような会社に、長く居座る必要はないと思っています。
かけた時間はすべて身になる
一方で、辛抱がなさすぎるのもよくないと思っています。少しつらいことがあってもすぐにやめてしまうと、それまでかけた時間がすべて無駄になってしまいます。かけた時間はすべて自分の身になるという気持ちで、前向きに捉えてもらえたらうれしいです。
弊社は物品販売なので、製造業とちがって常に変化していかなくてはいけない業界です。昨年やっていたことが今年はもう違う、という変化の激しさを楽しめる方に、ぜひ来ていただきたいと思っています。
編集後記
今回、福山楽器センターの新庄さんに取材させていただきました。広告費をゼロにしながらもEC売上比率97%という実績をつくり出す裏には、11カテゴリーそれぞれに専門スタッフを置き、コンテンツの質で勝負するという明確な戦略がありました。学生起業を目指す身としても、「かけた時間はすべて身になる」という言葉がとても印象に残っています。楽器業界の枠を超えて、他社を支える存在になりたいという新庄さんのビジョンに、これからも注目していきたいです。