インタビュー

AI で「人と向き合う」時代を創る──KAGUYA(カグヤ)岡田夏奈が描く、日本企業の未来

更新: 2026年5月31日
PROFILE
KAGUYA株式会社 代表取締役 CEO
岡田 夏奈

Google・Amazon・MBA。すべての経験は「起業」のための伏線だった

起業の仲間探しのためにGoogleへ

もともと、新しいイノベーショで社会に大きなインパクトを与えることへの関心がずっとあって。起業って、一番わかりやすくイノベーションしているじゃないですか。国の進化を後押しする意味でも、起業という舞台がいいなと思っていたんですよね。

だから学生のころから起業には興味があって、スタートアップでインターンをしたりもしていました。ただ、私は一人でやるより「仲間を集めてやりたい」タイプで。そのときはまだ共同創業者が見つかっていなかったので、それを探しながら新卒で Google に入ったんです。

狙い通り、共同創業者は Google の中にいた

Google って独立する人が多くて、アントレプレナーマインドセットを持つ人が自然と集まる環境なんですよ。私はビジネス側の人間なので、技術に強いエンジニアと組みたいと思っていました。入社してみたら、まさにそういう人たちがいて。実際に今の共同創業者も Google のメンバーです。入社前の狙い通りでした。

Google と Amazon、まったく違う二社の「成功哲学」

GAFA でひとくくりにされがちですけど、Google と Amazon って社風が全然違うんですよ。

Google は自由を愛するというか、クリエイティビティを重視するカルチャーで、どんどん自発的にチャレンジしていく雰囲気です。一方の Amazon は、IT 企業というよりリテール企業なので利益率が低い。だから「倹約の精神」が根付いていて、無駄を省いて、何でも仕組み化する。ドキュメントを徹底的に書く文化で、月次・週次・四半期ごとにきっちりレビューする。

どちらも成功していて、でも真逆のスタイル。両社から学べることは本当に多かったですね。

 

グローバルな経営を学ぶために海外のMBAへ

ずっと起業に興味があったので、ビジネススクール(MBA)もそのために行きました。フランスとシンガポールにキャンパスのあるINSEADというスクールに行き、海外の最新トレンドをキャッチアップしながらアントレプレナーシップの授業を受けて。卒業後はAmazonの経営企画部門で新規事業に関わり、その後独立したという感じです。

タイミングとしては、「20代のうちに」という気持ちがありました。失敗したとしても思い切りチャレンジするなら、今が一番若い。だから動きました。

 

「AI で効率化」では足りない。目指すのは「AI で人と向き合う」こと

業務効率化だけでは語れないからこそ面白い二つの領域

KAGUYAは、採用とマーケティングの領域をメインに AI 開発をしている会社です。

よくある AI ソリューションって「業務効率化」「省力化」に目が向きがちなんですよね。でも採用とマーケって、そこだけでは語れない。どうしても「人間らしさ」が入ってくる領域なので、難しいし、面白い。だからこそ私たちは「AI を活用して、もっと人と向き合う」というビジョンを掲げています。

AIペルソナがプロダクトの核心

私たちが作っているプロダクトの中心にあるのが、「AIペルソナ」です。ペルソナというのはマーケティングでよく使われる言葉で、顧客ターゲット像のことですね。そのペルソナをAIで細かく作り込んで、プロダクトの真ん中に据えているんです。

想定顧客や求職者の深層心理を深掘りして作ったペルソナを活用することで、マーケティングの質を上げたり、採用戦略の精度を高めたりしています。外部の市場調査データと、クライアント企業それぞれが持っているデータを組み合わせて、ペルソナとしてアウトプットしていく。それが私たちのアプローチです。

 

「技術に強い」も「現場に強い」も、どっちもやる

AI 系の会社って大別すると、めちゃくちゃ技術に強い会社と、現場に深く入り込んでニーズを捕まえるのが得意な会社の二極になりがちなんですよ。

KAGUYAはその両方をやる。技術に強い人間と、ビジネス戦略も理解しつつ現場のニーズを汲み取れる人間の組み合わせって、実はあまり市場にいないんですよね。どちらかに強い会社は多いけど、両刀を持っている。そのバランス感覚が、お客さんにご期待いただける理由かなと思っています。

社員のポテンシャルを最大限引き出す社長の役割

自分の役割はタレントマネージャーだと思っている

私の中では、社長は一番偉い人というわけじゃなくて、「タレントマネージャー」に近い感覚があります。才能に溢れたメンバーがいる中で、いかに彼ら・彼女たちの力を最大限発揮できる環境を作れるか。それが一番大事だと思っていて。

各メンバーの関心領域ややりたいことはそれぞれ強くある。だからクライアント企業のニーズと、メンバーのやりたいことをうまくマッチングさせる。そのパートナーシップをいかに作れるかが、自分の役割だと自負しています。

KAGUYAの採用方針

うちの採用基準を一言で言うと、「のめり込めるタイプかどうか」だと思っています。うち

のメンバーは理系出身の人が多いのですが、好きな研究テーマに夢中になって、気がついた

ら時間を忘れていた、というような経験を持つ人がすごく多いです(笑)。

ものを開発するのが面白くて手が止まらない、目の前の課題に対してどんどん考えが進んで

しまう、気がついたら何時間も没頭していた。そういう人がうちにはすごくはまります。理

系職に限らず、ビジネス職でも、のめり込んでやっちゃうタイプが一番合いますね。

 

多様なバックグラウンドが会社の強さになる

スタートアップって同質性の高い人を採った方がコミュニケーションコストが少なくて楽なんですよ。でもあえてそこを崩して、違う視点を持っている人、全然違うバックグラウンドの人と一緒にやるのを意識しています。

国籍も性別も前職も、みんなバラバラで。かなり不思議な構成ではあるんですけど、そのごちゃまぜ感がむしろ面白いし、それが会社の魅力だと思っています。

日本を強くする。そしてグローバルへ

AI 活用の議論は「効率化」から「価値創造」へ

AI の活用って、「人の代わりに省力化・業務効率化」という文脈はもうすぐ陳腐化していくんじゃないかと思っています。それ以上に、AI を使ってどう付加価値につなげるか、売上の拡大につなげるか、という前向きな議論がもっと重要になってくる。

「これをやったら面白いことができるんじゃないか」というワクワクする気持ちや、クリエイティブな活動を AI がサポートできるようになると、もっと広がりがある。AI 活用の議論はそういう方向に進んでいくと思っていますし、私もその領域でやっていきたい。

日本の企業を強くして、グローバルへ

日本は少子高齢化で人手が減っていく。採用を頑張るのはもちろんだけど、それだけではまかないきれないところを AI でカバーしながら、人がやるべきところと AI が代替できるところを見極めていく必要がある。そのど真ん中をやれるのは、すごく面白いと思っています。

ビジョンとしては、日本がもっと世界の中で強くなってほしい。日本を背負っているエンタープライズ企業がどんどん AI をはじめとする新しい技術を受け入れて成長していくことを、全力で支援したい。そして日本発でグローバルへ。Japan to Global だけじゃなく、Global to Japan の文脈も含めて、もっと海外との接点を強めていける存在になりたいと思っています。

学生へのメッセージ──「考えすぎる前に、足を出す」

失敗より「やらないこと」の方が損

経験上思うのは、チャレンジしてみることに何よりも価値があるということです。考えすぎると足が出なくなるので、考える前に一旦足を前に出してみる。それをおすすめしています。

ビジネスに限らず、全力で趣味に邁進するもよし、インターンをがっつりやるもよし。何かに夢中になることは人生においてすごく価値が高い。特に若いころの熱量って、何ものにも代えられない。うまくいく・いかないに関わらず、やったことにはどんどん価値がついていく。怖がらずにとりあえず夢中になれることにチャレンジしてみるのがいいと思います。

「学生起業」か「就職」か、に正解はない

学生起業をするのも、就職をしてから起業をするのも、どちらもありだと思います。私の場合は BtoB の領域なので、一定社会人のお作法をわかってから起業した方がやりやすさはありました。Google という、前職が別の会社で活躍したスターの方々が中途で集まってくる環境の中で、大学を卒業したてのひよっこだった私が社会人として育ててもらえた。あの経験は、ザ・大企業に入らないと得られないものだったと思っています。

一方で、がむしゃらに学生起業していく仲間も周りに多くてすごく尊敬していますし、一回起業しましたという経験の価値は今めちゃくちゃ高い。最終的には何を取るか次第ですが、会社員という選択肢を残したいなら一回会社に入るのもありだと思います。

編集後記

岡田さんのお話を聞いて、「戦略的に見えることも、すべては使命感から始まっている」と感じました。Google に入ったのも仲間集めのためで、MBA に行ったのも起業のための布石。一見すると華々しいキャリアの裏側に、一本の太い軸があったんですよね。「AI で人と向き合う」というビジョンは抽象的に聞こえますが、採用とマーケという具体的な領域で実装しようとしているところに、KAGUYA(カグヤ)の本気度を感じます。「考える前に足を出す」という言葉、私自身もずっと頭の中で迷っていることがあるので、背中を押してもらえた気がしました。