インタビュー

流されるように始まった20代から、AIカンパニーの代表へ。保科一男が語る、主導権を渡さない生き方

PROFILE
株式会社プエンテ 代表取締役社長
保科一男

流されながら、進んだ20代

バブルの絶頂期に冷めていた高校生

私が高校生のころ、日本はバブル経済の絶頂期で、周りの同級生たちには、特別な就職活動をしていなくても企業からオファーが来ていました。就職が決まったとか、車をもらったとか、そんな話ばかりで。でも私はどこかで「こんな状況が長く続くわけない」と冷めていたんです。あまりにも熱狂しすぎていて、「これはおかしいだろう」と感じていました。

案の定、卒業するころにはバブルが崩壊し、社会の空気は一変していました。 正直、あのバブル感を味わわずに社会に出てしまったという残念感は今でもちょっとあります(笑)。

浪人後は大学にも行かなかった

大学に行こうと浪人している間にバブルが崩壊して、その後は就職氷河期がやってくる。そんな時代でした。結局、大学には進学しませんでした。新潟県長岡市の山あいの地域で育ったのですが、そこを出て、当時の彼女のところに転がり込み、しばらくブラブラしていました。 毎月2万円のお小遣いで。

転がり込んでいたら「バイトすれば」って言われてそっかと思い、何をしようかと考えていたら、彼女が転職して入る会社で求人が出ているからちょっと電話番すればいいじゃんと。それで入ったのが、インターネットのプロバイダーのベンチャーでした。5人ほどで立ち上がったばかりの会社で、1995年ごろの話です。 

アメリカをバイクで横断した 1 年

バイト前にはアメリカにも行っていました。何か志があって行ったわけじゃないんですが、新聞配達などのアルバイトで1年間かけて100万円を貯め、 バイクで西海岸からニューヨークまで横断して楽しかったです。それだけです(笑)。

でも、バイクで横断しただけでは、何かになるわけでもないじゃないですか。 帰ってきてブラブラしていたら、プロバイダーのベンチャーのバイトを紹介してもらったという流れです。

最初のスタートアップで掴んだ感覚

5人が70人になる瞬間を最初から見た

電話番から始めたバイトでしたが、「電話番だけじゃ仕事にならないから営業行ってくれない?」と言われて、営業を始めたんです。そうしたら5人で始まったベンチャーが 3 年後には 70人ぐらいの会社になって、年商が14億円くらいになっていました。

最初のメンバーだったので、入社してすぐマネージャーと言われて。自分でお客さんのところへ行って契約して、モデムや通信機の設置からコマンドを叩いて回線開通まで、全部 1 セットでやるという。今思うとまさにド・ベンチャーでした。

外資に転職したら年収が倍になった

その後、スウェーデンの通信機器会社からヘッドハントされました。みなさんのスマートフォンに入っている Bluetooth のチップを持っている会社の日本法人でした。アシスタントマネージャーをやってくれと。それで年収がいきなり倍の700万円くらいになったんです。26 か 7 のときですね。外資ってすごいなと思いました。

ただ、年商10兆円・社員10万人という規模の会社で、日本での年商規模は1,400億円ほどありました。 そこで私が1億円、2億円を動かしたところで、本体は微動だにしない。 誤差みたいな話で、「これ、あまり意味がないな」と感じて、 やっぱりネットベンチャーがいいなと。

2001 年、初めての創業

「会社は作るもの」だと気づいた 

前職で一緒に営業をやっていた友人が、「会社作ろうと思うんだよ、やらない?」と声をかけてくれたんです。会社ってそうか、作ればいいんだとその時はじめて気づいた。それで 2001 年に2人で株式会社タイレルシステムズというシステム開発会社を創業しました。2人で頑張って7年ほどでグループ年商25億円くらい、グループ会社もいくつか生まれて。2007 年ごろになったらだいぶやりきったなという感覚があって、当時のメンバーに株式を譲って自分は次のフェーズへ進みました。

タイレルシステムズは2025年に東証プライム上場のPCA株式会社さんにM&Aして頂き、100%子会社になっています。

ゲーム、VR ライブ、コンテンツの世界へ

2010 年代はゲーム会社を作ったり、IP 系のいろいろなコラボレーションに関わったり、VR ライブをプロデュースしたりしました。結局、自分がやりたいのはコンテンツ系と、ネット系のサービス開発。この 2 つをずっと探求して今に至っている感じです。

今、2 つの事業を動かしている

ローファイヒップホップ系 VTuber、約173万人のファン

今プロデュースしているのが、「Mellow(メロウ)」というローファイヒップホップ系のアーティストです。1 年前から毎週金曜日に新曲を配信しようと決めて、それから毎週ずっと続けています。おかげさまでグローバルにファンが広がって、海外と日本の比率が半々くらい、男女比も半々くらいで、

公式YouTubeチャンネル「Mellow 禁断の果実」

は約173万人のファンに支持していただいています。

自分がこの活動で大事にしているのは、デジタル空間であっても「手触りのある、温もりのある音楽」をやることです。今ちょうど彼女の3Dモデルを制作中で、できあがったら3Dアバターを使ったライブハウスでのライブやYouTubeのオンラインライブ配信もやっていこうという話をしていて、

7/25にMellowさんの3Dお披露目オンラインライブが決まりました。

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AI カンパニー、株式会社プエンテ

もう一つが、現在の中心事業である株式会社プエンテです。私が 1 人で代表として設計・開発・運用保守まで担って、ボリビアに15人ほどの開発チームがいます。ただ今はそのチームはプルリク(プルリクエスト)やコードのデバッグなどのレビュー専任にしていて、フロントの仕事は私が AI エージェントと一緒に回しています。

私の下に35体のAIエージェントがいて、さらに3階層の構造で動いています。営業・マーケ・提案書の作成まで全部 AI が担っています。問い合わせが来たら AI が分析して、その会社のホームページを調べて提案書の骨格を自動で作って、私が最終確認して承認すると、メールまで自動で送信されます。そこまでを全部仕組み化しています。

AI にはちゃんと名前をつけていて、1号社員は黒戸マリアちゃん、「これどう思う?」「設計から始めます」みたいな感じで会話しながら動かしています。設計・開発・運用の95% は AI、残り5% が私という感じですね。

学生に伝えたいこと

主導権は絶対に人に渡すな

自分がやりたいことを、誰にも譲らず、主導権を渡さずに極めること。これが、これからの時代を生き残っていく上で非常に重要だと思っています。精神的にも身体的にも健全に生きていく上で、すごく大事なことです。

いい会社があって、いいことを言う社長さんがいっぱいいます。ただ、それはその人が歩んだ人生であって、あなたの人生ではない。どんなにすごい人の下についていても、あなたの歩んだ人生じゃない。自分で真っ白な雪原に足跡をつけた方がいいです。

安定という幻想

大企業だから安定とか、そんなことはないです。そこで積んだ経験を活かして自分で何かやりたいというなら話は別ですが、大企業で一生なんとかなるとか、それはない。ハンドルは絶対に人に渡してはダメです。

好きなことを、後回しにしないでほしい 

53歳になった今、自分がやっていることを振り返ると、14 歳から24歳くらいまでに好きだったことしかやっていないんです。だから、今自分が本当に好きだと思っていることを大事にしてほしい。「それは趣味に置いといて」とか「仕事になってないから」とかやっていると、後になって、その選択の後悔が自分に返ってくると思います。

好きだという理由だけでいい。それ以外は何とでもなる。お金は後からついてきます。好きなことをやり続ければいいのにと本当に思っています。

AI 時代に人間がすべきこと

3年以内にほとんどの企業で AI が業務に組み込まれると思っています。営業も、マーケも、開発も、議事録作成も AI がやってくれる。そうなったとき、人間に残るのはコミュニケーション能力と、「何をすべきか」を考えて主体的に動く力です。

言われたことをこなすだけでは、足りないと思います。大学生になったら自分で発想して、何をすべきかを能動的に考えなければ、これからの時代は本当に生き残れない。

とにかく今のうちに、いろんな経営者のネットワークを作ること、自分で事業を作ってみること、実際に動いて、自分の目で見て感触をつかむこと。そういう経験値を今のうちに積んでおくのが一番大事だと思います。情報は AI が集めてくれるから、自分の感覚をどう掛け合わせるか、判断できる人間になってほしいです。

編集後記

保科さんのお話を聞いて、まず率直に「こんな生き方があるのか」と驚きました。流されるように始まった20代から、電話番のアルバイト、ベンチャーの急成長、外資系、起業、そして今はAIエージェント35体とともに事業を動かす代表へ。一本の太い軸がありながら、その道は決して計画通りではなかったはずです。それでも「好きなことを主導権を渡さずに極め続けた」という言葉には、強い説得力がありました。私自身、就職活動を前にして安定や肩書きに目が向きがちになっていましたが、「安定は幻想だ」という言葉は胸に刺さりました。AI が当たり前になる時代に、人間として何を磨くか。保科さんの姿勢そのものが、その答えの一つを示してくれているように感じます。