インタビュー

高卒・二浪・フラフラから始まった「世界を0.01%ずつ変える」エンジニアの旅

PROFILE
株式会社X-HACK 代表取締役
松田信介

高卒からエンジニアへ

二浪してどこも受からず上京

大学に行こうとして二浪したんですけど、どこにも受からなかったんですよ。で、そのまま福岡から東京に出てきて、1年くらい日雇い派遣でアルバイトしてました。今でいうタイミーみたいな会社ですね。その後は中古車の会社に就職して。振り返ると、本当にフラフラしてました。

iPhone が人生を変えた

エンジニアになったきっかけは、iPhone(アイフォン)を見たことです。iPhone が出た頃に「世の中すごい変わってくる」と思って。当時、頓智ドット株式会社が出していた「セカイカメラ」というアプリがあって、カメラ越しに風景を見るとお店の評価や不動産の価格が重なって表示される、今でいう AR(拡張現実)みたいなものでした。これが面白くて、自分もこういうものを作りたいと思ったんです。当時はプログラマーという言葉すら知らなかったんですけど。

ちょっとしたゲームでも年間数千万稼げるくらいスマホアプリが盛り上がっていた時代で、それに憧れてプログラマーになりました。ゲーム会社でエンジニアとして4〜5年働きながら、副業でもソフトウェア開発の外注を受けていて、仕事が忙しくなってきたので独立して、今に至るという感じです。

株式会社X-HACK の事業

「不便」を潰すことがアイデアの源泉

アイデアの発想は単純で、不便なものが嫌いなんですよね。「これ不便だな、今の技術だったら効率化できるんじゃないか」という感覚です。昔はそういうものを作るのに数年と数億円かかったかもしれないですけど、今は小さな会社でもアイデア次第で、AI に休みなく働いてもらえば1〜2か月、ものによっては1日2日で形になる。だからとにかくたくさん作って試しています。

面接練習アプリ「MENREN」と動画生成ツール

今は AI を使ったサービスをいくつか開発しています。一つは学生向けの就職面接練習アプリ「MENREN(メンレン)」です。AI と一緒に面接の練習ができるサービスで、喋った内容を AI が音声解析して深掘りの質問をしてくれたり、志望企業の情報を入れるとその企業の想定面接官を生成して模擬面接ができたりします。先月リリースしたばかりで、これから機能をどんどん増やしていく予定です。

バイト終わりに家に帰るまでの道すがらちょっと練習したいとか、明日朝一で面接があって今日たくさん対策したいとか、夜中に思い立ったときに都合よく相手してくれる人ってなかなかいないじゃないですか。そういうときに AI 面接官を使ってもらえるといいんじゃないかと思っています。

もう一つは動画生成ツールで、URL から自動的に字幕を付けたり、無音部分をカットしたりして、ショート動画を手軽に作れるものです。自社サービスを広めるには SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用しなければいけないんですが、ショート動画の素材を毎回人に依頼するのは大変なので、マーケティングとサービス運用が融合するような形を目指しています。

8人で、AI を前提に動かす

会社は私を入れて8人です。受託開発が中心で、新規の問い合わせはほぼ9割が紹介経由です。正直、今は採用するのも怖いというのが本音で。AI が凄すぎて、これからどうなるかわからないんですよね。小さな会社で体力もないので、採用して雇用を維持してあげられるのか、戦力になるまで1〜2年育てた頃に AI がもっと進歩していたら……という不安は正直あります。

ただ、人を育てていかなければ社会は発展しないとも思っていて。今は「いい人がいれば」という感じで様子を見ているところです。

世界観とビジョン

不合理をなくしたい

弊社のミッションは「世界を0.01%ずつ改善していくこと」です。世の中の不合理・不条理・ギャップをなくしていきたい。私自身が高卒なので実感があるんですが、本当は能力があるのに、家庭の事情や親の介護、小さな兄弟がいるといったさまざまな理由で、働けなかったり教育を受ける機会がなかったりする人が世の中には結構いると思っていて。そういう人たちが技術の力でもっと活躍できる場を作っていきたいです。

AI が変える「働く」の意味

AI が進化していくと、人間があらゆる仕事をしなくてよくなる時代が来るんじゃないかと思っています。10年後ではないけど、100年後でもない、20〜30年後くらいのイメージです。AI が身体性を持つロボットとして介護や配送を担うようになれば、人間に残される労働って何だろうというフェーズが来る。

今はみんな「どんな仕事に就くか」イコール「自己実現」みたいになっていますけど、もっと趣味や哲学、芸術、自分の時間をいかに楽しく過ごすかが重視される世の中になっていくんじゃないかと。金融資産や不動産を競うよりも、楽しく毎日生きることが大事にされる社会になっていくんじゃないかな、と楽観的に考えています。

学生へのメッセージ:今の価値観を疑ってみて

今の学生のみなさんは、本当に大変な世代だと思います。AI だけものすごい勢いで進歩して、アメリカでは有名大学を出ても就職先が見つからないという話も出てきているし、コロナもあったし。10年後・20年後がどうなるかは誰にもわからない。

だから「今の価値観を疑っていくこと」が大事なんじゃないかと思っています。働くこと・働かないことに対する考え方がこれからどんどん変わっていくと思うので、固定した価値観に縛られず、まず健康でいること。楽しく毎日生きること。そっちの方が大事になってくると思いますよ。

編集後記

今回、株式会社 X-HACK の松田信介代表にお話を聞かせていただきました。高卒・二浪を経て日雇い派遣からキャリアをスタートし、iPhone との出会いをきっかけにエンジニアとして独立されたストーリーはとても印象的でした。松田さんが一貫しておっしゃっていたのは「不便をなくしたい」というシンプルな動機で、その延長線上に AI を活用したサービス開発があるのだと実感しました。「働くことの意味が変わる」という話は、就活を目前にした私たち学生にとって、キャリアの軸足をどこに置くべきか考えさせられるものでした。面接練習アプリ「MENREN」は就活生にとってすぐに使えるサービスなので、ぜひ試してみてください。