インタビュー

経営者発掘コンテストで優勝、ソニーを辞めて挑んだ「国産クラウドCMS」という戦い

経営者発掘コンテストで優勝、ソニーを辞めて挑んだ「国産クラウドCMS」という戦い
PROFILE
株式会社コネクティ 代表取締役社長
服部 恭之

ソニー時代、そして起業へ

サラリーマンで生きるつもりだった

学生の頃は、独立願望を考えていませんでした。神戸大学 経済学部を出て、ソニーに新卒で入社しました。最初は本社の人事部に配属になって、採用や研修を中心にやっていました。人事を数年やったあとは事業部に異動して、BtoBの部署で商品企画部に配属されて、最後は戦略部門で事業戦略を担ってました。

当時の会社では、上を目指して偉くなりたいなと考えていました。サラリーマンとして大きな成功を収めることが、私にとっての明確な目標でした。だからこそ、あのコンテストというきっかけがなかったら、今も普通にそこで働き続けていたと思います。それほどまでに、本当に素晴らしい会社でしたね。

経営者発掘コンテストが転機になった

独立のきっかけは、ソニーの戦略部門で新規事業を検討していたときのことです。他社がどんな新規事業のスキームを持っているのか関心があって、当時ワークスアプリケーションズという会社が「1人シリコンバレー創業プロジェクト」というコンテストをやっていたので、参考になるかもと思って応募しました。

実際に応募してみると、社内で新規事業をやるコンテストではなくて、社外にその事業をやるための会社を作り、出資を受けて新規事業を立ち上げる経営者を発掘するコンテストという趣旨である事を理解し。当初はスキームの勉強ができればいいかなぐらいの気持ちで参加していたのですが、選考が進む中で真剣に取り組んでいく中、結果としてそこで優勝してしまってたんです。そのコンテストを経て会社を設立することが決まり、2005年12月、起業のために同社を退職しました。

現在の事業内容

大手企業向けのウェブ戦略パートナー

現在の事業は、大手企業様のウェブの戦略やデジタルのパートナー事業です。ソニーの時代とはまったく別物で、当時はデジタルサイネージというハードウェアを扱っていたので、インターネットにはほぼ関係のない仕事でした。

具体的には三つの事業をやっています。一つ目は大手企業様のウェブサイトのリニューアル。二つ目は、そのウェブサイトの構築や運用を担う基盤となる、CMS(コンテンツマネジメントシステム)のクラウドサービス提供です。実態としてはCMSに加えて、顧客の情報を統合管理するCDP(カスタマーデータプラットフォーム)も併せて提供していて、この二つを合わせてクラウドの基盤事業を展開しています。中でも「Connecty CMS on Demand」が主力サービスです。三つ目は、リニューアル後の運用支援やマーケティング支援ですね。

PaaSとBPaaSを一気通貫でやる強み

事業の構造を整理すると、CMS・CDPのプラットフォーム事業(PaaS)と、その周辺にある運用支援やマーケティング支援(BPaaS)を、垂直統合でワンストップに提供しているのが弊社の特徴です。通常、ソフトウェアだけをやる会社と、ウェブ制作やマーケティング支援だけをやる会社は分かれているのですが、そこを一気通貫でやっているのは、なかなか類を見ない提供形態だと思っています。

大手企業向けのエンタープライズCMSという分野で戦っている競合は、外資系のメーカーです。その中で国産でこの分野をやれているのは、いまのところ弊社だけです。しかも最初からオンプレミスを経由せず、クラウドネイティブでスタートしたのも珍しいところで、製造業向けのCMSでは弊社がシェア1位、クラウド型のCMS全体で見てもシェア1位のポジションにいます。私自身も「米Business Week誌が選出するアジアの若手起業家ベスト10」 という称号をこうした過程の中で得てきました。

これから目指す姿

日本の技術者が輝ける場所を作りたい

ソニーにいた頃から感じていたのは、世の中のトレンドを作るIT・ソフトウェアの領域は、ほとんどが北米中心の会社から生まれていて、日本はそれを輸入して使う立場だったということです。ハードウェアだけでいいのか、日本の技術者がもっとソフトウェアやデジタルの世界で輝ける社会が必要なのではないか、という問題意識がありました。

いまようやく、その足がかりが何年越しかでできつつあります。日本の大手企業が「外資系の製品しかないから」と嫌々使うのではなく、「国産でいいものがある」と選んでもらえる状況まで来ているので、これをさらに広げて、事業としても伸ばしていきたいと思っています。国産のデジタルの会社がシェアを取り、外資系と競争優位を持てるという未来を、社会全体でも感じてもらえるようになれば、次に挑戦する人も続いていくはずです。

学生へのメッセージ

とにかく動いてみることが大事

いまは何でもできる時代になったと思っています。私たちの時代もITの環境が整ったからこそ創業ができましたが、いまはAIの環境が出てきて、人をそれほど多く採用しなくてもビジネスをスタートできる状態になっています。

私自身がいつも思うのは、とにかく始めてみるという考え方が大事だということです。思ったらまず動いてみる、その場所に行ってみる、誰かに会ってみる。実は、会社を立ち上げる傍らで音楽活動も並行してやっていて、結果としてソニーミュージックからメジャーデビューまでしています。当時から、パソコンを使えばプロとアマチュアの差を埋めて音楽を作れる時代になっていましたし、いまはAIでさらにそれができるはずです。

ちょっと前だったら「無理じゃない?」と言われていたことが、ITやデジタルの力によって、私は起業もできたし、メジャーデビューもできました。頭で考えるよりも、まずやってみる中で学べることや気づくことがあって、その先に次にやるべきことが見えてきます。動く人にしか情報は集まらないと思うので、自分の可能性を閉じずにやっていってほしいですね。

編集後記

今回のお話で印象的だったのは、服部社長がもともと独立志向ではなく、コンテストへの応募がきっかけで起業に至ったというエピソードです。ソニー時代の課題意識が、いまの「国産クラウドCMS」という事業の軸につながっている点にも、一貫したストーリーを感じました。AI時代だからこそ「とにかく始める」という言葉は、キャリアに迷う私たち学生にとっても、背中を押してくれるメッセージだと思います。貴重なお話をありがとうございました。