飲食店5店舗まで拡大した日々
新卒で3年間経験を積んだあと、27歳のときに友人と共同で飲食店を始めました。アルバイトで1年間貯めたお金と借金で、高円寺に1号店をオープン。最初の月の銀行残高は約30万円しかない崖っぷちの状況からスタートでしたが、そこからなんとか軌道に乗せて、最大5店舗まで拡大できました。
1年半の開発が、一瞬で崩れた
飲食店と並行して、もう一つ取り組んでいたことがあります。飲食店向けのスマートフォンを使ったPOSレジサービスの開発です。当時は2011年。エンジニアがいなかったので、エンジニアリングを1から勉強して、多くの人にアドバイスや力を借りながら、1年半かけてローンチしました。全然動かなかった。
理由は、開発環境ではLTE(当時の最速回線)を使っていたのに、当時の実際の店舗には3G回線しかなかった(※Wi-Fiがある飲食店が今では当たり前だけど、当時はとても少なかった)。現場と開発環境のギャップに、まったく気づけなかったんです。
最終的に、このサービスの失敗で約2,000万円の損失が出ました。
「現場で動かなければ意味がない」
30万円しか口座にないところから、一生懸命飲食店で稼いだお金です。正直、かなり痛かったです。でも、この経験がなければ今の自分はないとも思っています。
どれだけ開発環境で完璧に動いていても、実際の現場で使えなければ何の意味もない。当たり前のことなんですけど、2,000万円かけて身をもって知りました。決して安い勉強代ではありませんが、頭でわかることと、体で知ることは全然違う。この経験が、その後のキャリアに大きく影響していきます。
ビズリーチで学んだ「失敗の使い方」
起業経験があったから、抜擢された
飲食店を売却した後、2013年にビズリーチに入りました。当時はまだ一般的には知られていない会社でしたが、サービスが秀逸で、メンバーも優秀でした。勢いを感じていました。
私はセールスとして中途入社したのですが、入社してから半年で新規事業開発に抜擢されました。これは飲食店事業でサービス開発をしていた経験があったからだと思っています。失敗の経験って、次の場所では武器になるんですよ。
事業は売上も立って、約60人のメンバーを擁する組織になりました。
「やりたくない」と思ったことが、一番面白かった
ビズリーチを出た後、元上司が経営する企業(現在は上場企業)からオファーをもらって、SEO領域に関わることになりました。最初は全く興味がなかった。
でも実際にやってみたら、これが面白くて。SEOをどう解釈して、理解して、サービスに落とし込むか。そのプロセスに夢中になっていました。
「やってみないとわからない」というのは本当にその通りで、自分の思い込みで可能性を狭めてしまっていたことに気づかされました。
1万時間という仕事哲学
3年間で1万時間を積む
私が仕事を判断するときの基準のひとつが「1万時間やるか」ということです。
一般的な社会人は月間約160時間働くので、年間で約1,920時間。でも私は社会人になってから、ほぼ毎月300時間以上働いてきました。年間で約3,600〜4,000時間。3年間続けると、約1万時間になります。
1万時間の経験を積むと、わからないことや話せないことがほぼなくなって、その領域の誰とでも対等に渡り合えるようになる。飲食店でも、HR・採用でも、SEOでも。私はそれを繰り返してきました。
仕事は時間をかけた分だけ成果が出る
仕事が退屈だと思ったことが、一度もないんですよね。
仕事って、時間をかけた分だけ成果が出るんです。筋トレと一緒で、やればやるほどレベルが上がる。成果が出るとメンバーも成果を出すようになって、目標達成がもっと嬉しくなる。その連鎖が起きるから、仕事がどんどん楽しくなっていきました。
GOKKOが挑む、日本エンタメの再興
日本のドラマ産業は沈んでいる
率直に言って、日本のエンタメ・コンテンツ産業が沈んでいくことへの危機感と恐怖感があります。
日本は漫画産業の蓄積があって、エンタメとして強い部分はある。でもドラマ産業は、世界的に見ても厳しい状況にある。20年前は日本のドラマが強かったのに、今は韓国と日本で立場が完全に逆転してしまっています。
制作予算を見ると、日本のドラマ制作には約3,000万〜5,000万円が使われています。でもハリウッドや韓国では約2~3億円。資本力に大きな差がある以上、同じ土俵で戦うのは簡単ではありません。
縦型ショートドラマで逆転できる
だからこそ、縦型ショートドラマという領域に可能性を感じ、最初に着手しました。縦型の良いところは、「コストをかけられない」ところにあります。この領域なら、資本力で差が生まれないので、ひっくり返せる可能性がある。GOKKO(ごっこ倶楽部)は縦型ショートドラマを通じて、日本のエンタメ産業を引っ張っていくことを目指しています。
ただ、GOKKOは「縦型ショートドラマの会社」ではなく、「コンテンツ・エンタメ企業」です。縦型だけじゃなく、横型コンテンツやAIを使ったコンテンツ制作など、さまざまな手段を駆使して、世界と渡り合えるコンテンツをつくっていく。それが私たちの方針です。
「ONE PIECE」「キングダム」のような作品を
最終的に目指しているのは、歴史に名が残るようなコンテンツ作品をつくることです。「ONE PIECE」「キングダム」のような作品に触発されて、人に影響を与えられるようなコンテンツを残したい。
今後5〜10年の間に、そういう作品を複数出せる会社にしていきたいと思っています。
学生へのメッセージ
やると口にしたことを、やれるかどうか
学生のみなさんに伝えたいのは、「やると口にしたことをやれるかどうかが全てだ」ということです。環境のせいにすることも、周りのせいにすることも意味がない。
それから、「無駄なことに時間を使うことに価値がある」と気づけるかどうかも重要だと思っています。エンジニアリングを学んだことが新規事業のサービスディレクターに繋がり、SEOを学んだことが縦型動画のアルゴリズム理解に繋がるなんて、当時は全く思っていませんでした。面白くないこと、やりたくないことでも、10,000時間やり切ることで無関係だった点と点が繋がり線になる。何よりも「他の人が持っていない経験・スキル」は自分の強みに変わる。AIが出てきたことは、インターネットが登場したときと同じくらいの世の中の変革だと感じています。でも、先回りばかり考えている人たちの中でうまくいく人はいないだろうと思っています。まず動いてみること。その積み重ねが、1万時間になっていくんです。
編集後記
田中さんのお話を聞いて、「失敗の数が多い人ほど強い」という言葉の意味を実感しました。数々の経験が今のGOKKOを支える土台になっているのだと思います。特に印象的だったのは、「仕事が退屈だと思ったことがない」という言葉です。月300時間以上働き続けながら、その仕事を楽しんでいる。そのエネルギーの源泉は、「時間をかけた分だけ成果が出る」という確信にあるのでしょう。就職活動を控えた私にとって、「やると言ったことをやり切る」というシンプルな言葉が、一番刺さりました。