大工になりたかった少年時代
多くの経験からたどり着いた外食の道
高校を卒業してすぐに料理の道へ進んだのですが、正直に言うと「この道でやっていきたい」という強い意志があったわけではありませんでした。もともと「手に職」をと考えていたので、中学を卒業したら大工になろうと考えていました。
ただ、時代背景から「高校ぐらいは行っておかないと、これからの時代は厳しい」と周囲から言われたこともあり、進学することになりました。高校時代には部活動やいろいろなアルバイトを経験し、その中の一つとして外食に出会ったのがこの道に進んだきっかけです。
社長になるまでの道のり
人との出会いや支えられてきた結果、今がある
40年ほど前に外食の世界に入りましたが、いろいろな経験を通してお客様に「おいしい」「ごちそうさま」と言っていただける喜びを感じ、ぼんやりとですが将来は自分の店を持ちたいと思っていました。ただ「社長」というキーワードは自分の中にはなく、その後に多くの業態の運営や立ち上げに携わり、人事部長や営業本部長などを経て、経営体制の刷新を機に現職に就きました。振り返ると自分のキャリアはすべて、人との出会いや人に支えられてきた結果であったと感じています。
マルチブランド戦略
危機的状況下での気づき
弊社は創業時より、多くのブランド開発をおこなってきました。その中で蟹料理「甲羅本店」、焼肉「カルビ一丁」というブランドを軸に成長してきました。その後に「赤から」が3本目の柱として誕生したのですが、2000年代初頭にBSE(狂牛病)が流行し、一部業態ではお客様のご利用が大きく減少、成長スピードも鈍化しました。そうした危機的な状況下に置かれても、他の業態が支えとなり事業を継続し、次の成長へ向かうことができた経験はマルチブランド戦略の重要性を改めて実感する出来事でもありました。
組織改革と現場との向き合い方
今後の成長スピード加速のための決断
社長に就任してからは、会社がさらに成長していくために、バックオフィスと営業部の組織改革をおこないました。バックオフィスは専門性を要する人材を適所に配置し、営業部としては複数のブランドを管理する体制から、ブランドごとに営業部を分ける体制へと変更しました。時代の流れもあり、意思決定を加速させる必要があると常に感じていたことが理由です。
対話を重ねる重要性
一方で、難しかったこともあります。体制変更前は採用や企画なども含めて各店の裁量でできることが多く、現場でのやりがいや達成感に繋がっている部分もありました。現場で話をする中でも裁量を奪われたと感じる者もいましたが、そこは会社が成長していく過程で必要なことだと説明し、対話を重ねていきました。また、業績も上がり、会社の成長を実感してくれるようになるにつれて、そうした思いも少しずつ解消されていきました。
現場に足を運ぶ理由
数字だけでは判断できない部分
今でも時間の許す限り店舗に足を運び、スタッフとコミュニケーションを取っています。その理由としては、業績の数字が良いからといって、それだけで現場の状況を判断することはできないからです。むしろ状態がいい時ほど、現場に行って、働いているメンバーの表情や雰囲気、前向きに取り組めているかなどを、自分の目で確かめたいという気持ちがあります。
もちろん直接、私が現場で指示を出すことはありませんが、上長たちと認識のすり合わせをおこない、気になる部分などを上長と共有し、改善につなげることはおこなっています。今後も現場スタッフと直接話せる関係性は継続していきたいと思っています。
今後も大切にしていきたいこと
最後は人の力だと信じている
多様化するニーズや変化の激しい時代の中でもテクノロジーの力を駆使し、現場スタッフがお客様にしっかりと目を向けられる体制を整えていきたいと思います。私が最も大切にしているのは「人の力を信じる」ということです。どれだけ仕組み化を進めても、最終的にお客様がどのお店を選んでくださるかというのは、人によるところが大きいと思っています。
私たちが理念に掲げる「おいしさと楽しさの創造」という部分は今後も大切にして、会社全体でお客様に向き合っていきたいと考えています。
若い世代への眼差し
根本にある素直さやホスピタリティ
長く現場に携わってきて、昔と今ではやはりアナログ・デジタルでの世代間のギャップは感じます。あわせて生活環境による経験値の違いも確かにあると思います。ただ飲食業ということもあり、お客様への対応や細やかな所作といった部分への教育は時間をかけておこなっています。
それでも飲食業や弊社を選んで来てくれるような方たちはもともと、素直さやホスピタリティという、純粋な気持ちが根本にあることが多いと感じています。
学生へのアドバイス
とにかく行動してみてほしい
私が伝えられるとすれば、学生という時間は、その瞬間にしかないものだ、ということです。同じ世代の人たちと同じ時間を共有できるのは、学生の間しかありません。何かやってみたいと思ったら、とにかく行動したほうがいいと思います。それが自分の糧になっていくはずです。失敗か成功かということよりも、後々に活きてくるかどうかが大切ですし、失敗したことも、後の成功に必ずつながっていくと思っています。
甲羅グループのこれから
赤からの出店拡大と海外への挑戦
今後の成長という部分では、「赤から」の出店をさらに加速させていきたいと考えています。今後も既存・新規のフランチャイズオーナー様とともに「赤から」を全国のお客様にお届けし、「おいしさと楽しさ」を体験していただければと思っています。
また、海外展開についても視野に入れているので挑戦していきたいと考えています。
編集後記
今回のインタビューを通じて、マルチブランドという戦略が、狂牛病という大きな出来事をきっかけに実感を持って学ばれたものだったと知り、経営における学びは計画どおりに得られるものばかりではないのだと感じました。組織改革の裏で、現場の裁量ややりがいと向き合いながらすすめてこられたお話も印象的でした。数字だけでなく、自分の目で現場を確かめ続ける姿勢は、規模の大きな組織を率いるうえでこそ大切なのだと学ばせていただきました。貴重なお話をありがとうございました。