バイク事故とずる賢い「単位の取り方」
大学生活は日光浴びずに過ごした
神戸大学に入学した私は、正直、何もしていませんでした。深夜までバイトして、麻雀して、夕方に起きる。日光をほとんど浴びない日々を送っていました。就職活動で外に出る機会が増えた時、「日光ってこんなに辛いんだ」と感じたくらいです。それを普通に面接で言ったら落とされて、さすがに軌道修正しないといけないと気づきました。
そんな私が大学1年生の 5 月に、大きな事故を起こしてしまいました。バイクでタクシーと接触して、1 ヶ月以上入院。左手骨折、歯が 3 本折れて、右足には今も後遺症が残っています。正座ができなくなるほどの手術も経験しました。
ただ、その入院生活で気づいたことがありました。入院後にテストを受けたら、それなりに点数が取れたんです。「学校に行かなくても単位って取れるんだ」と。そこからさらに大学に行かなくなっていきました。我ながら、ずるい学び方でしたね。
「売るものは何でもよかった」から始まったキャリア
営業力をつけたくて証券会社へ
就職は大和証券グループに入りました。理由はシンプルで、営業力をつけたかったから。別に証券でなくても保険でも何でもよかったんです。なんとなく波長が合いそうな証券会社を選んだ、というのが正直なところです。
ただ、1 年で辞めています。色々な社長さんと話す機会がある中で、「若いうちに自分でやりたい」という気持ちが強くなってきました。
自分の強みは「受験の知識」だけだった
起業するといっても、当時の私にはお金もネットワークもノウハウもありませんでした。唯一あったのは頭の中の知識、つまり受験知識だけ。「今の自分で戦えるもの、売れるものってなんだろう」と考えた時に、その知識を売る学習塾という選択肢が浮かびました。
弊社の塾は、偏差値 65 以上の子を難関大学に入れるようなコンセプトではありません。偏差値 40〜45 くらいで、クラスのほとんどが専門学校や就職を考えているような子たちに囲まれて育った生徒たちに、勉強の意義や楽しさを伝えながら、中堅〜難関大学を目指すというコンセプトで運営していました。
やってみたら、その子たちがめちゃくちゃ伸びるんです。できないんじゃなくて、やる意味がわかっていなかっただけ。ちゃんと目的を教えてあげたら、みんな熱心に勉強するようになる。そこで気づいたんです。「人の能力にそんな大きな差はない。与えられた環境と、そこから引き出される熱量の方がよっぽど大事なんだ」と。
デロイトで「人と組織」を体系的に学ぶ
塾は 70 人ほどの生徒を抱えるまでになりましたが、正直、消去法で選んだ仕事だったので、生きがいとは言えなかった。属人的なビジネスをしていて、「これを本当に拡大できるか?そもそも拡大したいのか?」という問いに自信を持って答えられなかった。
それよりも、塾の経験を通じて「人と組織のパフォーマンスを伸ばすこと」への興味がどんどん強くなっていきました。ちゃんと体系的に学ぼうと、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社しました。そこで改めて人と組織を学び直して、「やっぱり自分でやった方がいい」という結論に至り、独立の道を歩み始めました。
RIZAP グループでの M&A 経験
独立前に、RIZAPグループにも在籍しました。自分のバックグラウンドを活かしながら、スリリングな環境を求めていた時期です。当時 RIZAPは積極的に M&Aを展開していて、ジーンズメイトなどのアパレル企業も含めて買収した企業グループを作っていました。その PMI(買収後統合)プロジェクトにどんどんアサインされていくポジションに就きました。
楽しかったんですが、なんとなく「そうじゃないな」という揺れもありました。最終的に独立して、RIZAPがそのままクライアントになってくれるという形で雇用形態を業務委託に変え、今に至っています。
「エクセルを納品したらそれでいい」は違う
機動力と伴走力が強み
コンサルは基本的に、差別化が難しいサービスだと思っています。デロイトや PwCといった大手も、人がぐるぐる入れ替わるのでサービスの均一化が難しい。
その中で、お客さまから一番評価していただいているのが「機動力」と「伴走力」です。お客さまが本当に求めているのは、エクセルやパワポを受け取ることじゃなくて、プロジェクトをやりきって会社が変革していくことですよね。でも、コンサル業界に長くいると、「パワポを納品したらお客さまは満足するよね」という意識になりがちです。
私たちは違います。従業員の行動が変わらなければ意味がないから、行動指針を 4 コマ漫画で作ろうとなったら漫画家と提携して 4 コマで納品したりする。人事制度の運用にあたって、従業員が使いやすいように、 AI を活用したマイクロツールを入れる。本当にお客さまの目線に寄り添って、会社に入りきる感覚でやっています。
プラスのエネルギーを与えられる人材を集める
人材については「うちはスキルが高い人材よりも、プラスのエネルギーを与えられる人材を集める」と宣言しています。現在 25 名ほどいるメンバーは、大手コンサルファームの出身者と事業会社の人事出身者が主なバックグラウンドです。みんな優秀ですが、それ以上に人間力がある。
採用の際に大切にしているのは、やりきる覚悟があるか、チャレンジ精神があるか、利己的でなく利他的か、仕事を楽しんでいるか、「〜ならでは」の発想があるか、そういった要素をどれだけ満たしているかです。地頭は一定必要ですが、それが満たされていれば、あとは想いの強さで判断しています。環境で人は変わると信じているので、そういう人を伸ばす自信はあります。
人に灯火をともすで「Luvir」
社名はラテン語の造語
社名を変更する際、私ともう 1 人の共同経営者と一生懸命ディスカッションしました。電球の明るさを表す単位「ルーメン(lumen)」に着目して、その単位を社名にしようと全社のサミットで発表したんです。「組織に灯火をともす」という想いを込めて。
ところが新卒 3 ヶ月くらいの社員に「名前がダサいです」って言われてしまいました。論理で作っているだけあって、何も言い返せなかった。それでみんなでもう一度考え直して、ラテン語の「Lumen(灯)」と「Vir(人)」を合わせた造語「Luvir」になりました。「人に灯火をともす」という想いは変わらず、言葉だけ磨き直した感じです。
会社を「真剣な遊び場」に
没頭・没入できる人を増やしたい
弊社のビジョンは「会社を真剣な遊び場に」です。子どもって、学校や公園で過ごす 1 秒 1 秒どんどん成長していきますよね。なぜかというと、目の前の物事に没頭・没入できているからだと思っています。大人も同じです。仕事に没頭・没入できれば、パフォーマンスはどんどん上がる。それが会社の成長になり、社会の豊かさにつながる。
塾でも、勉強に没頭・没入できた子たちがどんどん伸びていきました。大人のビジネスパーソンも同じはずです。そういう「真剣に遊べる人」を増やしていくのが私たちの使命だと思っています。
コンサルという手段にこだわらない
今はコンサルティングという形でサービスを提供していますが、それはあくまで一つの手段です。真剣な遊びができることならば、どんな新しいプロダクトやサービスも作っていきたい。スポーツや塾の経営、組織運営を通じてもっと「没入」を学んで、それをビジネスに還元することもやりたい。企業への投資をして中から業績を上げることも視野に入れています。
やりたいことはたくさんある。だからこそ今は、資金力・人・ノウハウ・テクノロジー・カルチャーといったアセット(資産)をしっかりと積み上げる時期だと思っています。
学生へのメッセージ
夢はなくていい、「期待値」を上げる動きをしろ
来週、高校生向けの授業をする予定なんですが、そこで話そうと思っていることがあります。大人はよく「夢を持て」と言いますよね。でも私は、他人から強制される夢に何の価値もないと思っています。夢は自然と湧き出るものであって、人に言われて持つものじゃない。
だから「夢を持たなきゃ」と焦る必要はない。ただ、「人生の期待値を上げる動き」はすべきだと思っています。
たとえば大学受験。漢文とか徳川の最後の将軍の知識なんて、受験以外で使うことはほぼないですよね。でも、良い大学に入ることで、良い人脈ができて、良いキャリアの選択肢が生まれる。やりたいことが見つかった時にチャレンジできるステータスができる。それが「期待値を上げる動き」です。
大学に入ってからでも遅くないと思っています。居酒屋バイトをずっとやっていた私がそれを言うのも説得力がないかもしれないですが、ベンチャーのインターンでも、自分のスキルを一つでも上げられる経験でも、絶対に何か一つはあるはずです。それに向き合ってみることで、コンサルのキャリアが生まれたり、事業で優秀な人を引っ張ってこられたり、やりたいことの成功可能性が上がっていく。
これは学生だろうが 30 代だろうが、全員が考えるべきことだと思っています。
編集後記
「夢はいらない」という言葉から始まった中川さんのメッセージは、最初少し驚きました。ただ話を聞くうちに、「期待値を上げる動き」という考え方の方が、よっぽど実践的で力強いと感じました。バイク事故で入院中も、単位が取れると気づいてさらにサボるという行動力(?)には思わず笑ってしまいましたが、その後に塾経営・デロイト・RIZAPという独自のキャリアを積み上げてきた軌跡は、自分なりの強みを見極めて動き続けた結果なのだと腑に落ちました。「真剣な遊び場」というビジョンに共鳴できる方は、ぜひ Luvir Consulting株式会社の扉をたたいてみてください。