インタビュー

「使い回しできないなんて、おかしい」理不尽から生まれた新事業

「使い回しできないなんて、おかしい」理不尽から生まれた新事業
PROFILE
株式会社オージャスト 代表取締役
金 功勇

15年続けたイベント事業からの転機

スケールの壁にぶつかった

15年間、イベントの仕事をずっとやってきました。ただ、続けていく中でなかなかスケールしにくいという壁にぶつかっていたんです。それで新規事業を立ち上げようと考えていたときに、あるお客さまから展示会ブースを作ってほしいという依頼をいただきました。

「使い回しできない」への違和感

当時はブースを作る技術が自社になかったので、展示会の施工会社さんを探してきてお願いすることにしました。その展示会は年に3、4回出展するとのことだったので、使い回しができるように作ってもらえないかとお願いしたところ、露骨に嫌な顔をされたんです。頑なに使い回しはできないと言われました。どう考えても使い回したほうがよいと思ったので、いろいろな会社に片っ端から連絡してみたのですが、どこも同じように嫌な顔をされてしまって。しまいにはお客さま自身も、使い回しはできないかもしれないと言い出す始末で、明らかに理不尽だなと感じたんです。

Re:ブースサービスの立ち上げ

そこで、使い回しができる展示会ブースサービス「Re:ブース」を立ち上げることにしました。事業として検討を始めたのは3年ほど前で、実際にサービスとしてスタートしたのは1年ほど前になります。今では、このサービスが会社の主軸に移ってきている状態です。

年間10万社が使い捨てる展示会ブース

73%が2日で廃棄されている

調べてみると、展示会というのは年間で1,000回ほど開催されているんです。平均すると、1回あたり数百社ほどが出展していて、年間でのべ10万社ほどが参加している計算になります。そのうち73%ほどがいわゆる木材で作られたブースで、2日間ほどの展示会が終わると毎回捨てられているんですよね。展示会が終わるとゴミ収集車が何十台も来て、壊されたブースを落としながら回収していく光景があるくらいです。

環境にも理不尽な仕組み

こうした使い捨ての仕組みは環境にもよくありませんし、なんとかその理不尽を変えていきたいと思い、使い回しができる展示会ブースへの乗り換えを提案しています。話をすると、確かにそのほうがよいですよねと納得していただけることが多いですし、多くの企業は毎年、展示会に複数回出展するものなので、そこにはニーズがあると感じています。

現在はまだ積極的な営業ができているわけではなく、紹介や展示会の設営に伺った際に周りの企業さんに声をかけるといった形でお客さまを獲得しています。それでも案件はいただけているので、手応えは感じています。

フルリモート×スーパーフレックスという働き方

社員7人、アシスタント300人

弊社は新しい働き方をする人たちが集まっている会社です。社員は全員フルリモートで、勤務時間も場所も自由に選べるスーパーフレックスという形で働いています。社員は7人ですが、加えてアシスタントとして毎月報酬をお支払いしている方が300人ほどいて、その多くは育児中のお母さんたちです。空いた時間、隙間時間に手伝ってもらうという契約で関わってもらっています。

タスク分解で誰でもすぐ働ける

アシスタントの方の業務はさまざまで、応募対応をひたすら行う人もいれば、誤字脱字をチェックするチーム、物品の購買手配を担当する購買部など、仕事がタスクごとに分解されていて、マニュアル化されています。そのため登録してすぐに仕事を始めてもらうことができて、報酬もすぐお支払いできる体制を整えています。在宅の仕事を探す中で、初期費用を求められてお金を取られてしまうケースもあるようで、弊社できちんと報酬が支払われることに驚かれる方もいるくらいです。

管理を一切しない理由

働き方は自由なので、自分の中の自発的なやる気のようなものがとても大切だと思っています。誰かに急かされなくても、自分からやりたいことを発信して行動できる人が働きやすい環境です。実は、勤怠の管理は一切していません。誰の目もない環境でも、完全に本人の自主性に任せています。管理をしてしまうと、逆に管理されないと動けない人が集まってきてしまうので、あえてそうしていません。

お互いに助け合うチームづくり

育児中の人が多い組織

大事にしているのは、アシスタントも社員も、お互いに助け合える関係でいることです。育児中のメンバーが多いので、子どもが急に熱を出すといったことも頻繁に起こります。そうしたときに、自分から手を挙げて仲間を助けられるような関係性が今の組織にはできていると思います。

仕事を楽しめることが一番大事

育児中のお母さんにとって、育児のほうがよほど大変で、仕事はある意味で息抜きのようなものだったりします。だからこそ、仕事に喜びを持って取り組んでもらえることを大切にしていて、仕事を楽しめることが一番のポイントかもしれません。

未来予測の専門家に聞いた話

「会社がなくなる」という予測

以前、未来を予測する専門家に、今後10年後の未来はどうなるかと聞いたことがあります。占いではなく、世界中の特許を分析することで、10年後の未来がある程度わかるという事業を手がけている人で、東京大学出身のメンバーが集まっているチームだと聞きました。その人が言っていたのは、会社という存在がなくなり、個人が個人に発注する時代が来るという話です。これがずっと自分の中に残っていて、これからの働き方は劇的に変わっていくのだろうと感じています。

豊かな国に生まれた責任

AIの発展もありますし、仕事はつらくて大変で、食べるためにやらなければいけないものという時代はもう終わっていると思っています。まだ社会が発展していない国では、そうした自由な働き方を夢に見ている人たちがいるはずです。せっかく豊かな社会に生まれてきたのに、苦しみながら食べるために働いていたら、その人たちをがっかりさせてしまうと思うんです。豊かな国がどうやって自由に、幸せに働き、生きていくかを世界に先駆けて追求することが、日本に求められている責任だと考えています。

展示会から働き方まで変えていきたい

廃棄物6,000トン削減という数字

Re:ブースのサービスが半分ほど普及すれば、年間で6,000トンほどの廃棄物削減につながると試算しています。これは人口12万人ほどの中規模の町が、年間に出す家庭ごみの量に匹敵する規模です。展示会という一つの場を変えていくことで、社会によいことをしながら、自由に働くという概念も一緒に広げていきたいと思っています。

5年で売上100億円という目標

今後は新卒、中途の両方で採用を強化していく予定で、5年で売上100億円という計画を掲げています。採用の募集にはIndeedを活用しています。

自由に楽しく働く仲間へ

学生の皆さんには、会社という存在がいずれなくなっていくかもしれないという前提を、私たちは受け入れようと思っていると伝えたいです。弊社はとにかく自由な働き方を大切にしていて、この働き方がこれからの未来をつくっていくと思っています。大きな会社に入るというキャリアももちろん大切ですが、これからの働く概念を一緒に変えていきたいという方とは、ぜひ仲間としてやっていきたいと思っています。

編集後記

「使い回しができない」という一言への違和感から、環境問題の解決と新しい働き方の両方につながる事業を生み出した金さんのお話には、驚きの連続でした。フルリモート、スーパーフレックス、管理をしないマネジメントなど、固定観念にとらわれない組織づくりの発想は、これから働き方を考える学生にとっても大きな学びになると感じます。未来予測の専門家の話も非常に印象的で、これからの社会を考えるきっかけをいただきました。ありがとうございました。