インタビュー

「自分の船を、どこへ向かわせるか」——予防医療で人のパフォーマンスを最大化する、プリメディカ・田中友英の原動力

PROFILE
株式会社プリメディカ 代表取締役社長 兼 CEO
田中 友英

ダラダラと過ごした大学時代、それでも消えなかった問い

総理大臣を夢見た少年

小学校の文集に「総理大臣になりたい」と書いたんです。生まれた頃からずっとジャパンパッシングとジャパンバッシングで、日本の凋落が語られていた。「この国の”ダメだね”って言われてる感じ、変えたいな」という気持ちが、ずっとありました。

自分が何のために生きているのか——歯医者に行くたびに、あの痛みに見合うような価値のあることを自分はやっていけるんだろうかと、真剣に考えていたんです(笑)。

ザ・大学生のまま、就活へ

インターンもとくにやっていないし、サークルに入ってダラダラ過ごしていました。「ザ・大学生」という感じでしたね。

ただ、何をやりたいかはずっと模索していました。就職活動では、日用品メーカーや金融・自動車メーカーも検討しましたが、「ひとつの領域に特化してキャリアを築くとした場合、自分は人生をかけてどの領域をやっていきたいと思うのだろうか」という問いに対して考え続けるようになったのです。その結果、よりマクロな視点で「社会の仕組みやインフラを作っていく仕事」に惹かれている自分に気づいたんです。

そこで出会ったのが、国家公務員というキャリアでした。時間をかけて国を作っていくような仕事は面白そうだと思って、公務員試験の勉強も始めました。

「一生かけて街を作る」——森トラストへ

公務員の勉強をしている時、大学の先輩で三井不動産に行った人の話を聞いたんです。ビルって「100年建築」で、一棟一棟作っていくと街になり、都市になり、国になっていく。不動産デベロッパーは、一生かけて国の基盤を作っていく仕事なんだ、と捉えていました。

東京は今、世界トップクラスの都市と言われていますが、ハードの視点から素晴らしい国を作っていく、これは一生かけてできることだと思いました。それが森トラスト株式会社に入るきっかけでした。

当時は分譲事業と賃貸事業の収益構造の違いを理解していなかったこともあり、「森トラストの収益性の高さは、社員一人ひとりの付加価値の結集なのだ」と感銘を受け、入社を決意しました。

 

「自分一人で戦えるのか」——投資ファンドからコンサルへ

お金の不安を取り除いた先に

森トラストでは財務や 経営企画 に携わっていました。一方で、当時は何となく給与テーブルも分かったつもりになっていたので、自分の生涯年収が何となく見え多様な気がしたのです。「お金が目的で生きているわけじゃないけど、お金は心の自由度を決めるもの」だと感じていて。お金の悩みを一回取り除いたら、自分に何が残るんだろう。そういう問いを持ちながら、投資ファンドの株式会社ジェイウィルパートナーズに転職しました。

「自分がいなくても、このファンドは回る」

ジェイウィルパートナーズでは再生ファンドとして、事業承継や大企業のカーブアウト案件に取り組みました。非常にやりがいのある仕事でしたが、ファンドとしての仕組みが完成されているがゆえに、「自分自身が社会に提供できる独自の価値とは何だろう」と自問自答するようになりました。ちょうどその頃に株式会社産業革新機構(現:株式会社INCJ)の存在を知りました。

国のイノベーションのために働く

産業革新機構は官民ファンドで、国のオープンイノベーションを推進するための組織でした。自社のためじゃなく、国のイノベーションのために働くという姿勢がすごく面白そうだと思って。

半導体や車載用バッテリーなど国の産業戦略に関わる案件を複数担当しました。グローバル競争の中で日本企業の強みを活かしてどう生き残るか、国策と産業の成長を考えながら仕事をする経験は本当に面白かったです。

ただ、「ファンドにいるから出せている価値」と「自分一人で世の中で戦えるか」は別の話だな、とも感じていました。

ボストンコンサルティンググループジャパンで「一人で価値を出す」

その後、ファンドの投資期間が終了したこともあり、ボストンコンサルティンググループジャパン(BCG)に転職しました。コンサルなら、自分の考え方や物事の整理の仕方そのものに価値を出せる——一人でもできるんじゃないかと思ったんです。

M&A・経営戦略を担うチームで充実した経験を積ませていただきましたが、コンサルティングはあくまでクライアントの事業を支援する立場です。私自身の中に「第三者としてではなく、当事者として自ら事業を推進し、最後までやり遂げたい」という思いが強くなっていきました。また、プロジェクト単位で関わる働き方よりも、一つの事業に腰を据えて長期的な価値を創出したいと感じるようになりました。

 

「予防医療」という一生かけられる問いとの出会い

成長産業として選んだヘルスケア

自分の人生をかけてやりたいことをやろうと思ったとき、日本の人口が減少していく中で成長産業はどこだろうと考えました。デジタル化の進む 「IT 分野」か、高齢者が増えていく「ヘルスケア分野」か。

正直なところ、当時の私はヘルスケア領域にあまり馴染みがありませんでした。「病気になってから行く場所」というイメージが先行していたからです。でも、一度踏み込んでみないと実情はなにも分からないなと思ったのです。

もう一つが、プリメディカが取り組んでいる腸内細菌の研究でした。腸内細菌って、一人の人間の体に約100兆個も存在していると言われていること、知っていますか? 「脳腸相関」とも言われているように、人間のパフォーマンスの概念を変えるかもしれない領域なんですよね。人生をかけて腸内細菌を研究して、人のパフォーマンスのベースを変えていける——なかなか出会えない事業だと思いました。

また、尿でメンタルストレスを客観的に評価する検査「ココシル®」を見たとき、これはスタンダードになるんじゃないかと感じて、プリメディカに転職を決めました。

CFO・CSOを経て、代表就任へ

入社当初は CFO として財務・経営戦略・M&A の検討などを担いましたが、入社当初から事業をやりたいという気持ちがありました。また、これまで培ってきた経験から、自ら意思決定を行い事業を牽引していく役割こそが自分の使命ではないかと感じるようになっていました。性格診断でも同様の結果が出たことで背中を押され、ちょうど前代表の富永が昨年度で退任するタイミングだったこともあり、「僕がやります」と代表を引き受けました。今年4月から代表取締役社長 兼 CEO として動いています。

 

プリメディカが描く「予防医療の革命」

トップクラスの医療機関ネットワークを持っている強み

弊社は2010年に創業し、2012年から販売を開始して、現在全国約4,700施設以上の医療機関との取引先があります。特に健診機関への販売ネットワークは、おそらく日本でもトップクラスなのではないかと思っています。

その根底にあるのが「エビデンス」へのこだわりです。主力検査サービスの脳梗塞・心筋梗塞発症リスク検査「LOX-index®(ロックス・インデックス)」は、大学の先生と共同研究してエビデンスを積み上げ、根拠をきちんと持っているプロダクトです。「こういう論文や研究をもとに、お取り扱いいただいている検査です」とお医者さんに説明できる。血液検体の測定ルールも整備されている。この信頼性があるからこそ、医療機関のネットワークを築くことができたと思っています。

検査だけが「予防医療」ではない

検査サービスを通じて成長してきた会社ですが、本当にやりたいのは「予防医療を完成させること」なんです。検査をしたあとに行動変容を起こして、はじめて予防医療が完成する。

日本には皆保険制度があって、「病気になったら病院へ行けばいい」というカルチャーが根付いているように感じており、予防医療のマーケット自体もまだ小さい。だから「いかにこの業界の幅を広げるか」が今の課題です。業界の集まりに行っても、みんな「日本はまだまだ予防医療が普及していない」という認識は一致している。一緒に大きくしていける人たちと取り組んでいきたいと思っています。

目指すのは「毎日最高の状態」

予防医療って、「病気が怖いから予防医療にお金を払う」という動機だと、若い人には刺さりにくいのではないか、と感じています。私自身もそうですが、普段そんなに病気を恐れて生活していない中で、未病にお金を払うモチベーションはなかなか生まれないのでは、と。

では、予防医療を突き詰めていくと何になるのか。いろんな人と話して気づいたのは、「今日体調がいいな、悪いな」という感覚——自分にとってベストなパフォーマンスの状態を毎日提供できることが究極ではないかということです。

病気を防ぐためだけではなく、「常に自分が最高の状態で生活できる」インフラを作る。今日肌ツヤが悪い、お腹の調子が優れなくて会社に行きたくない、そんなことが一切なくなる世界。そこを目指すべき理想として掲げていきたいんです。

遺伝子や腸内環境によって体質や疾患のなりやすさは人それぞれ違うので、「あなたはこの食物繊維を摂った方がいい」「こういう運動が合っている」という、AIを通してよりパーソナライズされた行動変容の提案ができるようになっていく。膨大なデータを処理する AI は、予防医療のパーソナライズを加速するドライバーになると思っています。

また、広島東洋カープ様と腸内環境からサポートする取り組みをおこなっていて、アスリートのコンディションを最大化するプロジェクトも進めています。私の夢は「オリンピックで日本人の金メダルを増やすこと」。弊社の取り組みの成果として、こんなにわかりやすいものはないですよね。

 

一緒に働きたい人へ

素直さ・情熱・好奇心

一緒に働きたい人に求めるのは、大きく3つあります。

一つ目は「素直さ」。組織で大人数でやっている意味って、スケールできることにあると思っていて。会社として決まったことをやるときに、フラットに動いてくれる人が必要です。と同時に、私は社長だから全ての意思決定が正しいとは全然思っていない。もし社内に自分より優れたアイデアを持った人がいるなら、その人が作るプロダクトや世界を見てみたい。だから階層を気にせず、素直に思ったことを言ってほしいんです。

二つ目は「情熱」。自分の思いを強く持って行動してくれる人がいると、自分の考えや行動が何倍にも拡張される。会社にとっても、自分の能力のキャップにならずに成長していけるという意味で、熱量のある人と働きたい。

三つ目は「好奇心」。あるビジネス書で「人のポテンシャルを見るとき、根底に好奇心がある」という考えを読んで、腑に落ちたんです。好奇心がプライドよりも勝るとき、それが熱量に変わっていく。何でもチャレンジして、フィードバックして、会社が働く人たちの探究心によって成長していく——そんな組織を作りたいし、一緒に作ってくれる人を育みたいと思っています。

自分の船を、どこへ向かわせるか

最後に学生の皆さんへ伝えたいことを一つ。就職って「面白い船に乗る」感覚があると思うんですが、結局会社は人でできていて、自分の人生は自分のもの。「自分の船をどこへ向かわせたいか」を、ちゃんと考えてほしいんです。

大企業に入ったり、給料の高い仕事に就いたりする価値観はもちろんある。でもその土台にある自分の人生——自分の船をどこに向かわせたいかは、会社に入ってからも常に考え続けなければいけない問いだと思っています。

 

編集後記

今回、予防医療の世界を正直ほとんど知らない状態でお話をお聞きしました。田中さんのお話で印象に残ったのは、「病気を防ぐ」という守りの発想ではなく、「人のパフォーマンスを常に最大化する」というポジティブなビジョンでした。腸内細菌の研究から広島東洋カープとのプロジェクト、そしてアスリートの金メダル獲得を増やす夢まで、予防医療の射程がこんなに広いとは思っていませんでした。不動産ディベロッパー、投資ファンド、経営コンサルティングと多様なキャリアを経てきた田中さんの「自分の船をどこへ向かわせるか」という言葉は、就活を前にした私にも刺さりました。プリメディカが描く「全員が毎日最高の状態で生活できる世界」、ぜひ実現してほしいと思います。