インタビュー

「両方わかる」が私の強みだった。営業と人事、二つの経験が今につながっている

「両方わかる」が私の強みだった。営業と人事、二つの経験が今につながっている
PROFILE
株式会社湘南ハイテク企画 代表取締役 
石井 豊

文系青年が、メーカーの道を選ぶまで

証券かメーカーか、悩んだ末に

学生時代は、これといって夢中になっていたものがあったわけではありませんでした。もともと文系で、就職活動では証券会社とメーカーの両方を見ていました。保険会社もよいけれど、メーカー的なところもおもしろそうだなと思い、今につながる会社に進んだという流れです。

決め手は、高校時代の同級生だった

最終的にその会社に決めたのは、人事担当者が高校時代の同級生だったからです。当時はネットもない時代でした。紙の会社案内を見せてもらったことなどが、今につながっています。起業したい、社長になりたいという気持ちは正直あまりなかったのですが、入るなら上のほうを目指したいという思いはありました。

日立製作所時代に培った、人と向き合う姿勢

一年で500人を採用した経験

入社後は、日立製作所グループで20代を過ごしました。1983年ごろのことです。一年間で新卒約226人、中途約260名ほど、約500名くらいの採用に携わりました。この規模で人を集める経験はとてもおもしろく、楽しかったですね。いろいろと任せてもらえた経験が、今に大きくつながっています。当時採用した人たちとは、40年経った今でも交流があります。

「違うバックグラウンド」をひとつのチームに

当時の中途採用では、新卒採用とは異なり、未経験者がほとんどでした。私たちが担当していたのはメインフレームと呼ばれるハードウェア分野で、CPU(中央処理装置)を開発するような領域です。そのため、実務経験よりも理工系大学や工業高校で電気・電子を学んだ基礎知識を重視し、入社後はOJT(実地研修)で育成していく方針でした。

大変だったのは、同じ日立製作所のグループ会社の合併で異なる環境で働いてきた人たちを、ひとつのチームになじませることでした。給料の高い方に合わせると会社が成り立ちませんし、低い方に合わせると既存メンバーの不満につながります。役職や待遇のバランスを慎重に工夫し、最低限のラインを手探りで作り上げていきました。

営業と人事、両方がわかることが強みになった

伝統のある会社を引き継ぐ立場になった今、なぜ自分が任されたのだろうと振り返ることがあります。営業経験があったからこそ新しい取引先を開拓できましたし、人事経験があったことで、就業規則をはじめとする社内制度や組織についても理解していました。営業と人事の両方を経験していたことが、自分の強みだったのではないかと思っています。引き継いで間もない頃に入社してくれた人たちも今なお第一線で活躍してくれていて、その積み重ねが現在の成果につながっているのだと感じますね。

「未経験」を「経験者」に変える、新しい採用のかたち

家の中で育てて、マッチングする

これまでの人材紹介は、経験のある人を紹介して、お客様の求める技術とマッチするかどうかを見るというやり方が中心でした。ただ、それではなかなかマッチングしないケースも多いんですよね。

そのため今取り組んでいるのが、うちで一度採用して、3ヶ月ほどかけて育ててから送り出すという仕組みです。たとえばCCNA(シスコシステムズ社による国際資格)が取れるくらいのレベルまで育て、そこから紹介先の会社に入ってもらいます。未経験だと「受け入れられません」と言われてしまう方でも、一度うちを経由することで、ITスキル有と書けるようになります。内容はともかく、経験者として次に進めるようになるんです。今は年に3回ほど、6人から8人規模でこの研修をおこなっていて、これを年5回、年間10人ずつキープできる体制にしていきたいと考えています。

お見合い期間としての紹介予定派遣

一度うちの研修を経て人柄を見てもらってから、紹介先に決まるという流れにしているのも工夫のひとつです。人によっては年齢が高くて次につながりにくいこともありますし、決まったとたんに何割かの紹介料が発生する仕組みだと、双方にとって負担が大きくなってしまいます。だからこそ、お見合い期間のように、実際に働く様子を見てもらったうえで判断してもらいます。本人にとっても会社にとっても、納得のいく形を今大事にしているところです。

組み込み系からWeb・AI系へ、変わり続ける事業

うちはもともと組み込み系のソフトウェアやハードウェアの技術者が半数近くを占める会社で、公共案件や防衛関係、自動車関係など、ものづくり系の分野を中心に取引先を持ってきました。とはいえ、この領域はこれからそこまで広がっていかないだろうと感じています。

そこで今力を入れているのが、Web(ウェブ)系やAI(人工知能)系、初心者にも扱いやすいソフトウェア系へのシフトです。SES(システムエンジニアリングサービス)という請負のかたちを取りながら、経験を積んでもらって次のステップに送り出すという循環をつくっています。何がこれから伸びるのかは、いつもアンテナを張りながら考えているところですね。

これから社会に出る学生へ

まずは現場を経験してみる

今は自分でやろうと思えば、いろいろなことができる時代です。ただ、机の上で考えているだけでは、現場とは違う部分がたくさんあります。最初から高いハードルの目標を立てなくてもよいので、まずはここまでクリアするというところから、一つひとつ考えていくのがよいと思います。インターンシップのようなかたちでもよいので、1、2年ほどで現場を体験してみることをおすすめします。

基本情報技術者試験の勉強をしてみる

IT(情報技術)に進みたいという学生には、基本情報技術者のような資格試験の勉強をしてみることをすすめています。資格そのものを取らなくても、勉強する過程でコンピューターの仕組みが全体的にわかるようになるんですよね。専門用語が飛び交う場面でも会話についていけますし、設計などの仕事も任せてもらいやすくなると思います。AIを活用した学習もどんどん広がっているものの、ネットワークの基礎など土台になる部分を広く浅く押さえておくことは、これからのIT業界でも役に立つはずです。

編集後記

今回お話をうかがって、印象に残ったのは「両方わかる」という言葉でした。営業も人事も経験したからこそ見える景色があり、未経験の人を育てて送り出す仕組みも、ご自身が中途採用の現場でなじませる難しさを味わってきたからこそ生まれたものなのだと感じました。効率だけでなく、人がどうすればハッピーになれるかという視点を大事にされている姿勢に、これから社会に出る私たちも学ぶところが多いインタビューでした。