インタビュー

AI時代にこそ必要なのは感情だ。Unipos松島稔が語る、「最高の集団」 のつくり方

更新: 2026年6月15日
PROFILE
Unipos株式会社 代表取締役社長
松島 稔

斜に構えた学生が、インターネットに魅了されるまで

バスケットボールと空手に打ち込んだ学生時代 

高校・大学時代はバスケットボール部に所属しながら、空手も続けていました。空手は中学か高校のころから始めて、今も続けています。古流の流派で、武器を使ったりもするちょっと変わったスタイルです。

当時の私は、正直なところ大人や先生の言うことを素直に受け止められず、斜に構えて生きていました。その頃、上智大学の新聞学科に入り、当時はジャーナリストになりたいと思っていました。

インターネットとの運命的な出会い

上智大学を選んだのは留学したかったから。でも学校に行ってみたら外国人がたくさんいるので、「これなら、わざわざ海外に行かなくてもいいのでは」と思うようになりました(笑)。

せっかく海外に行くなら人と違うことをやりたいと思って、ビジネススクールに近いプログラムに参加し、8週間のインターンに取り組みました。行き先はロンドン。もともとソニーの子会社だったスピンオフベンチャーで、音楽著作権のライセンスビジネスをやっている会社です。

そこで衝撃を受けたんですよね。アイルランドやアルゼンチンの人たちと非同期でチャットしながら音楽を作って、CD-ROMに焼いたり、配信していたんです。全然違う国の人たちと何かをつくり上げる体験が、本当に面白くて。「インターネットってマジですごいな」と思った、それが原体験です。

取締役として経営を支え、社長になるまで 

「ただの役割」という社長観

大学を出たあと、当時はほとんどの学生が知らないような、インターネットビジネスを手がける会社に入りました。会社が上場し、リーマンショックのタイミングで子会社に転籍。その後、創業チームでMBO(マネジメントバイアウト)をおこなって独立し、今のUnipos株式会社の前身ができました。

2013年から取締役として経営全般を統括し、2025年から代表取締役社長になりましたが、「社長になった感」みたいなものはあまりないんです。社長ってただの役割だと思っていて。よく言っているのは、「王冠をかぶるべきなのは社長ではなく、会社そのものだ」ということです。社長は会社の中の一つの役割にすぎない、という前提でずっとやってきました。

大事にしてきたのは、お客様・株主・社員という3者からの信任をどうバランスよく得るか、ということ。誰か一人で成し遂げられるものではなく、関係する人たちが集まってつくっていくものだと思っています。

熱意をもって働ける会社を増やすために 

日本で「熱意をもって働く人」が少ないという現実

突然ですが、ギャラップ社の調査によると、日本で熱意をもって働いている社員の割合は全体の約6%という世界最低水準のデータがあります。

さらに、2040年までに日本の就労人口は約1,100万人不足すると言われています。一つの巨大都市が丸ごと消えるほどの規模です。熱意をもって働く人がわずか6%で、そこに人口減少が重なったら、日本企業にとって、非常に大きな課題になるはずです。

だから私たちは、その熱意をもって働ける会社を増やすための、ソフトウェアとコンサルティングサービスを提供しています。

現場にも経営にも、両方アプローチする

経営層がトップダウンで「熱意をもって働こう」と呼びかけても、現場の人がすぐにそう感じられるわけではありません。だから重要なのは、現場の人が新しい気づきを得られる仕組みづくりと、経営者や人事部長などトップマネジメントへの働きかけを両方行うことです。Unipos株式会社の特徴は、この2つを包括的に支援できるところにあります。

Uniposの「ピアボーナス」というサービスも、まさにその一つです。社内で「今日の調整ありがとう」「あのプレゼンよかったよ」というような言葉をテキストメッセージで送り合う仕組みで、組織の中に流れる言葉が可視化されていきます。言葉を使って人の認知を変える、そういうサービスです。

AI時代に、人間にしかできないこと

仕事はなくならない、変わるだけ

AIが仕事を奪うという話をよく聞きますが、私は少し違う見方をしています。仕事はなくなりません。絶対に。変わるとは思いますけど。

生成AIは、基本的には大量のデータをもとに確率的に「もっともらしい答え」を出すものです。私が今こうして話しているのも、脳の中で情報を処理して言葉を出しているという意味では似た部分もある。ただ、AIには身体がない。感情もない。

だから大事になってくるのは、人間の身体性であり、「人と人が話す」ことと「AIと人が話す」ことの組み合わせから生まれるクリエイティビティだと思っています。AIをうまく活用して変える側に回れるか、それが問われている時代です。

感情こそが、人間の強み

最近、採用説明会でよく話しているのが「人を動かすアーキテクトになろう」ということです。課題解決や物づくりはAIがやってくれる部分が増えてくる。でも人を動かすのは感情です。どれだけ合理的に見える意思決定でも、最後に人を動かすのは感情です。

AIは“感情っぽい”文章を出力できます。でも、そこに本当に動いている心臓があるわけではない。だからこそAI時代において、感情というものの重要性はむしろ高まると思っています。「AI時代に熱意をもって働く人を増やす」という私たちの取り組みは、時代が進むほど意味を持ってくるはずです。

学生へのメッセージ

逃げない記憶が、人生のお守りになる

学生のうちにやっておくといいと思うことを、いくつか話させてください。

一つ目は「逃げない経験を一つ作ること」です。社会に出ると、簡単には投げ出せない場面が増えていきます。そのときに「あのとき自分は逃げなかった」という記憶があると、本当にお守りになるんです。一つでいい。なんでもいいから、逃げずにやりきった経験を作っておくといいと思います。

自分の感情の癖を知っておく

二つ目は「自分の感情の癖を知ること」です。私自身、インターネットに「すごい!面白い!」と感じた原体験が、今のキャリアにつながっています。

最近の若い世代は客観的に物事を見るのがとても上手ですが、客観性が強すぎて自分の感情に向き合えていないと、のちのち苦労することがある気がして。「自分が何にワクワクするか」「何が本当に好きじゃないか」、そういう喜怒哀楽のバロメーターに気づいておくことは、意外と大事です。

利害関係のない人と深く話す

三つ目は「いろいろな人と深く話すこと」です。損得なし、評価なしで、他の人の思考や感情に触れると、自分自身がすごく広がります。今日みたいに、初対面でもこんなに深い話ができるじゃないですか。

良い意味でも、反面教師という意味でも構いません。「こういう大人になりたい」「こういう大人にはなりたくない」。そうした出会いの一つひとつが、自分を形成していきます。学生のうちにそういう対話の機会を積み重ねておくことを、ぜひ大切にしてほしいと思います。

編集後記

「会社に王冠をかぶせる」という言葉が、インタビューを終えてもずっと頭に残っています。社長という肩書に権威を乗せるのではなく、会社という組織そのものを高めていくために自分の役割を全うする—そんなシンプルで力強い考え方を、松島さんはとても自然に話してくださいました。また、熱意をもって働く人が日本では約6%しかいないというデータは、これから働き方を考える立場として、かなり衝撃的な数字でした。「いい会社に入る」ではなく「一緒にいい会社にする」という視点で働ける人を増やすことが、Unipos株式会社の使命なのだと感じました。AI時代だからこそ感情が大事、という逆説的なメッセージも、強く印象に残りました。