野球漬けの学生時代がすべての原点
キャプテンで学んだチーム創り
学生時代は、小学校から大学までずっと野球をしていました。関西大学では準硬式野球部に所属していて、4年生のときにキャプテンを任せてもらったんです。決して強いチームではなくて、関西の大学でいうと同志社や立命が強くて、うちは三番目か四番目くらい。それでもなんとか勝ちたいなと思って、どうやったら勝てるかを考えていました。
「エンジョイベースボール」の誕生
そのときに創ったスローガンが「エンジョイベースボール」です。野球を楽しんで、点が入ったら喜んで、エラーが出たらみんなで励まし合う。一人ひとりが素の状態でやれるチーム、今でいう心理的安全性が高い状態を創ろうとしていました。優勝はできませんでしたが、シーズンが終わったときに後輩たちから「エンジョイベースボール万歳」と言ってもらえて、それが私にとって大きな成功体験になっています。チームでやることは、一人でやるより大きなことを成し遂げられる。これは野球から学んだことです。
リクルートで叩き込まれた仕事の本質
アンケートバイトからの内定
大学卒業後は、株式会社リクルートに入社しました。きっかけは、体育会のサークルに来ていたアンケートのアルバイトなんです。答えるだけで5,000円もらえるというもので、私はそれが3回来て、3回目が終わったときに担当の方から就職の話を聞かれました。当時のリクルートはある事件の影響であまりいいイメージがなくて、正直よく知らないと答えたら、オフィスを案内してもらうことになったんです。梅田のオフィスで、実際に働く社員の方が本当に活気があって、いきいきと働いている姿を見て興味を持ちました。そのまま人事の方に声をかけられて、内定をいただきました。
挑戦こそが成長という確信
当時のリクルートは事件の影響で公には採用活動をしていなかった時期でしたが、それでも同期は500人ほどいました。アンケートで自分をすべて見透かされていたんだと、後から気づきました。それだけリクルートに合う人材だと向こうも分かっていたのだと思います。
入社してからは、売り上げを上げても褒められず、逆に「自ら機会を創ったのか」と聞かれる文化でした。売り上げが上がらなくても、お客さまの話をして新しい挑戦をしたいと話すと、すごく褒めてもらえたんです。挑戦したら成長できる。これが「チャンス&トライアル」という、今の弊社の行動指針の原点になっています。
家業の危機と、社長就任という不合理な選択
母の一本の電話
リクルートで3年半ほど東京で働いていたとき、ちょうどバブルがはじけて、実家である今の弊社の経営が厳しくなりました。経理をしていた母から、会社がピンチだから助けてほしいと言われたんです。継ぐ気はまったくなかったのですが、母に言われたので、力になれることはやらなければという思いで大阪に戻りました。
大阪に戻ってからは営業として働きましたが、既存事業には借金があって、返せる目処もイメージもつきませんでした。それなら新しいことをするしかないと、今の主軸である販促ツールの制作に事業を切り替えて、9年ほどほぼ一人で営業をしてきました。
借金を背負って覚悟が決まった
9年経っても新規事業は伸びる一方で既存事業が凹んでいき、売り上げは変わらず借金は少し増えるという状態が続いていました。そんなときに先輩の社長から自己啓発セミナーに誘われたんです。3日目の昼に「自分が最も不合理だと思う行動をしなさい」という宿題が出て、そのとき私にとって一番不合理だったのが社長になることでした。
その場で父に電話をして、社長になると伝えました。会社もまだ落ち着いていないし、借金もたくさんある状態でしたが、1か月ほどで社長交代が決まりました。当時5億円ほどの借金があって、経営者が保証人になるので、それがすべて自分の肩にのしかかってきた瞬間に、本当の覚悟が決まったと感じています。
「チャンス&トライアル」と「ハッピートライアングル」
社員の成長がすべての起点
弊社の経営理念は「ハッピートライアングル」です。社員が自ら機会を創り、チャンス&トライアルで成長し、お客さまが感動し、会社が信頼と利益を得る。この三つが正三角形になることを目指しています。社員の成長がすべての起点になっていて、金持ちになりたいというよりも、お客さまの感動やチームでの成果に喜びを感じる人に来てほしいと思っています。
ファン創りが目指すもの
社会とのお約束は「ファン創りを通して感謝と笑顔があふれる」ことです。販促の仕事をしているので、お客さまの商品やサービスのファンを創ろうとしています。値引きやおまけでは、ファンは創れません。商品開発への思いを伝えて、共感してもらって買ってもらう。使ってよかったから友達に紹介してもらう。この連鎖を創ることがファン創りだと考えています。
採用で大切にしていること
理念に共感できる人と働きたい
社員は60名ほどになりました。採用で大切にしているのは、弊社の理念に心から共感してくれるかどうかです。世のため、人のために自分が成長することに喜びを感じる人と一緒に働きたいと思っています。野球でいうと、プロ野球選手とファンの違いです。ファンはスタンドから好きなことを言えますが、本当に優勝しようと思えば、選手は厳しい練習が必要になります。そこの違いを、採用のときには自分の心に聞いて判断してほしいと伝えています。
学生へのメッセージ ー 感情が動いた瞬間を掘り下げる
頭でなく心で振り返る
今の学生は情報が多い時代で、何をやったらいいか分からないという声をよく聞きます。私自身は、やりたいことは頭で考えてもあまりいい答えは出ないと思っています。過去に自分の感情が動いた瞬間、めちゃくちゃ夢中になったことや悔しかったことを深く掘り下げると、自分の価値観が見えてきます。弊社では新卒採用のときに、そうした振り返りをおこなうワークを一緒におこなっています。
今後の展望 ー 2032年、50億円の会社へ
10億円突破という節目
弊社は今期で61期目を迎えました。先月の決算で、はじめて売り上げが10億円を突破しています。数字そのものが目的ではありませんが、社員の成長や理念の実現があったうえでの結果だと捉えています。2年後には15億円、2032年には50億円の会社になることを目指しています。
AIを活用したファン創り
これまで繰り返しおこなってきた業務は、できるだけAIやDX化を進めて、人が考えることに時間を使えるようにしています。デザインやキャッチコピーの原案も、弊社のマーケティングの考え方を踏まえてAIでアイデアを10個ほど出すところまで活用しています。若い経営者はさらに先の取り組みをしていて、刺激を受けています。
経営者は、人に良い影響を与えられる仕事
少年野球で子どもたちに伝えたいこと
休日は少年野球の監督もしています。甲子園を目指すというよりも、子どもたちの中から経営者を育てたいと思ってやっています。経営者は人に良い影響を与えられる、本当にいい仕事だと感じているので、野球を通じてそれを学んでもらえたらと思って指導しています。自分の価値観をちゃんと見つけて、それに沿って生きることが何よりも大事だと考えています。
編集後記
今回のインタビューを通して、橋本さんの「不合理を選ぶ」という判断軸に強く惹かれました。学生である私自身、将来の進路にまだ迷いがあります。橋本さんがおっしゃっていた「頭で考えるのではなく、感情が動いた瞬間を振り返る」という言葉は、まさに今の自分に必要な視点だと感じました。ハッピートライアングルという理念のもとで、社員の成長がお客さまの感動につながり、それが会社の利益にもつながっていくという構造には、経営の本質を見た気がします。野球で培ったチーム創りの感覚が、そのまま経営に生きているというお話も印象的でした。