インタビュー

料理スキルゼロからの出発。「学食の神」が仕掛ける、大学を変える教育×食の革命

PROFILE
株式会社ORIENTALFOODS 代表取締役
米田勝栄

異色のキャリアと「逆転の発想」

バーテンダーから学食運営へ。設備不足をアイデアで突破する

実は、私は料理が全くできません。20代の頃、調理師免許の取得を目指したものの不合格になるほどの腕前でした。それでも飲食業界に飛び込み、バーテンダーとして昼夜を問わず無我夢中で働いていた時期があります。そんな折、かつての恩師から「大学のキャンパスにある飲食テナントの1店舗を立て直してくれないか」という依頼を受けたことが、全ての始まりでした。

最初はピンときませんでしたが、実際に店舗に入ってみると、1日の売上はわずか数万円程度。しかし、そこから5倍の売上を伸ばすことに成功しました。この「成果」が評価され、次々と空き店舗の運営を任されるようになり、現在の事業へと繋がっています。

「ない」からこそ生まれる独自の視点

私がカフェとして最初に入った店舗には、ガスコンロなどの基本的な調理設備がなく、鉄板一つしかありませんでした。しかし、「設備がないからできない」と諦めることはありませんでた。鉄板の上で煮込み料理を作ったり、学生のニーズに合わせてピザやサンドイッチから米料理へとメニューを転換したりと、創意工夫を凝らしました。

次に任されたのは、大手ステーキチェーンが撤退した後の店舗でした。ここでも電磁調理器しかないという制約がありましたが、南部鉄器の「鉄鍋」をフル活用し、ビビンバやスタミ丼を提供しました。従来の学食といえば、大きなバットで大量に作り置きし、保温したものを盛り付けるという「ぬるい」イメージが定着しています。しかし、私はそれに違和感を抱いていました。ジュージューと焼ける音、食欲をそそる匂い、目の前で調理される臨場感にこそ価値があると考えたのです。鉄鍋でドリアを作る際も、オーブンなら15〜20分かかるところをバーナーで炙り、わずか1分で仕上げる。料理人ではないからこその「非常識な発想」が、結果として大きな成功を生み出しました。

学食を「事業の実践の場」へ。学食プロジェクトの挑戦

100人超の学生が本気で運営する

現在、私が関わっている大学の学食では「学食プロジェクト」という一大プロジェクトを展開しています。特筆すべきは、社員は私1人のみで、アルバイト学生約40名以上と、プロジェクトメンバー100名以上の学生たちが主体的に運営している点です。彼らは、デジタルサイネージ用の動画制作から、新メニューの開発、SNSの運用、さらには自動販売機の商品選定や配列設計に至るまで、店舗運営のあらゆる業務を担っています。初期こそ私がノウハウを教えましたが、現在では学生が後輩を指導し、自走する組織へと成長を遂げました。

キャンパス近隣の畑では自ら農作物を育て、メニューに取り入れるだけでなく、地元の農家と連携した仕入れも学生が行います。また、学内にある4台の自動販売機は4つのチームに分かれて運用し、消費者心理やマーケティングを実践的に学びながら売上を競い合っています。データサイエンス部の学生と連携してAIを活用した売上分析を行うなど、学食そのものが「生きたビジネスの学びの場」として機能しているのです。

一流から直接学ぶ「学びメシ」プロジェクト

さらに、「学びメシ」という独自プロジェクトでは、著名な経営者やトップアスリートを学食に招き、講演会や質疑応答のセッションを開催しています。ゲストの選定から交渉、当日の運営に至るまで、全てを学生が主体となって進めており、このプロセス自体が彼らにとってかけがえのない成長の機会となっています。

目指すは「学食の授業化」と若者の自立支援

赤字の学食を、人気No.1の選択科目に

現在、全国の大学の約3分の1で学食が赤字経営に陥っていると言われています。大きな変革が求められる中、私が目指しているのは「学食プロジェクトの単位化」です。ありがたいことに、ある大学ではすでに「学食プロジェクトに参加したい」という学生が順番待ちになるほどの人気を集めています。「大学に入ったら絶対にこのプロジェクトに参加する」と志す高校生が現れるほど、魅力的な授業科目に育て上げることが私の目標です。将来的には、キッザニアで子どもたちが憧れる職業の一つに「学食」がランクインするような、新たな価値を創造したいと本気で考えています。

失敗を恐れず、「場」を使い倒してほしい

弊社のモットーは「挑戦あるのみ」です。私自身が常に新たな挑戦と学びを続けているからこそ、関わる学生やスタッフにも共に成長してほしいと願っています。私がトップダウンで引っ張るのではなく、「株式会社ORIENTALFOODSというプラットフォームを使い倒して、誰もが独立できるような実力を身につけてほしい」というのが私の真意です。社会に出る前に存分に失敗を経験し、働くことへのワクワク感を育める場所。それが、私の理想とする環境です。

学生たちへのメッセージ

「一歩踏み出す」ことで生まれる100倍の差

大学での4年間において最も重要なのは、「一歩を踏み出すか、否か」という決断です。たとえコミュニケーションが苦手であっても、最初の一歩を踏み出す勇気さえあれば、4年後には見違えるような成長を遂げることができます。これは決して大げさな話ではなく、現場で数多くの学生を見てきた私が確信している事実です。

誰と出会い、どのような体験を積み重ねるか。遊びも、学びも、仕事も、すべてに100%の情熱を注いでください。たくさんの失敗を糧にしながら、果敢にチャレンジし続ける姿勢を忘れないでほしいと思います。

編集後記

今回のインタビューで一番印象に残ったのは、「料理ができないからこそアイデアで勝負した」という言葉でした。ビジネスの成功要因を「スキル」ではなく「発想の転換」に置いているところが、私がこれまで会ってきた経営者とは一線を画していました。学食というと地味なイメージがありましたが、米田さんの話を聞いていると、マーケティング・農業・データサイエンス・メディア運営までが一つの場所に集まっている、これ以上ない実践の場に見えてきます。就活で「条件」ばかりを見がちな自分を少し反省しながら、「一歩踏み出した差は100倍になる」という言葉を胸に刻んで帰りました。