インタビュー

「誰もやらないことをやろう」やんちゃだった少年が、唯一無二のイベント会社をつくるまで

PROFILE
有限会社グローブプラニング 代表取締役
林 丈晃

型破りな青春時代

高校に5年かけた

学校はちゃんと出ていないんですよ、私。正確には出ているんですけど、ちゃんと通っていなかった、という感じで。若い頃は結構やんちゃな方で、通信制や定時制を渡り歩いていました。出身は長野県の松本市なんですけど、16歳くらいから親元を離れて一人暮らしをして、他県の通信制に通いながら働いたりして。普通は3年で卒業するはずの高校を、5年かけて卒業したんです。

バンドから広告代理店へ

その後は、お芝居や歌を歌うことに興味があったので、バンド活動をしていました。それが生業になればいいなと思って専門学校に行ったんですけど、あまりうまくいかなくて。フリーターみたいなことをやっていた時期もあります。ちょうどバブル経済の頃だったので、就職したいと言うと本当に簡単に雇ってもらえる時代で。当時は IT 企業という言い方はしていなかったですけど、IBM の特約店の会社に入りました。

結婚を機に松本に戻って、そこで就職したのが地方の広告代理店でした。紙媒体が主流の時代で、新聞広告や折り込みチラシを作ったりしていたんですけど、なんか面白くなかったんですよね。だから自分で考えて、地方のテレビ番組を作って売ったり、イベントを企画したりしていました。

「古い考えの社長」に提案が通らず独立

10年近く働く中で、インターネットの台頭とともに広告の世界がどんどん変わっていく時代が来て。このままだとこの会社はだめだなと思って、いろいろ提案したんですけど、社長が古い考えの人で、なかなか通じなかった。じゃあ、私がここでやっていたテレビの媒体のことと、イベントのことを持って出ていいですか?って言って辞めたんです。「いいよ」ってなって、それが独立のきっかけです。

「誰もやらないこと」が唯一無二をつくる

新規参入は門前払いが当たり前

独立してからは、広告代理店や施設の担当者に営業をかけたんですけど、なかなか相手にしてもらえなかった。発注先って、向こうにとって決まっているんですよ。一言言えばバーッと作ってくれて、いちいち説明しなくても揃えてくれるところがある。だから新規参入しようとすると、ものすごく大変になってしまう。実際そうで、門前払いばかりでした。

そこで考えたのが「自分たちにしか出来ないことをやろう」ということです。何が正解かはわからなかったんですけど、たまたま長野県内の観光施設から声がかかって、子どもたちやファミリーを呼び込むためのイベントをしたいという話が来た。そこで昆虫展(世界の昆虫迷路ラリー)や鉄道のおもちゃランドみたいなもの(わくわく鉄道おもちゃパーク)を一緒に作っていったんです。それが今の弊社の発端ですね。

ホームページで問い合わせが殺到

創業した当時はアルバイトもするくらい苦しかったんですけど、思い切ってホームページを作ったんです。2003年頃のことです。そうしたら、あちこちから昆虫展や鉄道展の問い合わせが来るようになって。呼ばれていく中でわかってきたのが、商業施設って若いファミリーが来てなんぼなんだということでした。

年配の方は来てもすぐ帰っちゃう。でも、20代後半から30代中頃のお父さんお母さんと小さな子どもは、子ども服も靴も消耗品もいろいろ買わなきゃいけない。食事もする。その層をいかに効率よく呼び込むか、というところに行き着いて、子ども向けのイベントをどんどん作っていきました。

「昭和レトロ展」は日本でうちだけ

弊社の考え方の一つは「誰もやらないことをやろう」ということです。誰もやらないことって、一見ニーズがないように聞こえるかもしれない。でも、誰もやらないことをやるというのは、唯一無二になれることが大きいんです。

例えば、弊社でやっている「昭和レトロ展」。昭和当時の商店街を移動式で再現するイベントで、昭和のガジェットや看板、ポスターを四トン車いっぱい分持ち込んで、一つひとつ立てていく。同じようなことをやっているところは多分、日本にはないんです。昭和レトロのものを貸し出したり展示するくらいの会社は数社ありますけど、そこまでをワンストップでやる会社はない。だから問い合わせも多いし、すごくよく売れます。単純に、うちに問い合わせるしかないので。

この2〜3年は昭和レトロブームや平成レトロブームもあって、かなり稼働率高く動いています。

相手の最終到達点を確認してから提案する

もう一つ大事にしていることは、相手の予算、呼びたい客層、そしてその結果どういう成果をもたらしたいかという最終到達点をきちんと確認した上で提案するということです。そこにズレが生じると、こちら側の押し売りになってしまうかもしれない。相手が何を必要としているかを科学的に捉えて、整合性を取った上で提案する。この二つは継続してやっていきたいですね。

リアルの場に人を呼ぶ、その喜び

子どもがキャッキャと喜ぶ現場

人手が足りないので、週末はイベント現場に私も出ることがあるんですけど、やっぱり子どもがめちゃくちゃ喜ぶんですよ。キャッキャと言って喜んで、お父さんお母さんもそれを見てすごく喜ぶ。それがリアルイベントの醍醐味だと思っていて。

今は SNS でも画面越しに楽しめるレクリエーションがたくさんあるじゃないですか。それでも、先日横浜のデパートでゴールデンウィークにやった鉄道博には、有料でも5000〜6000人の方が来てくれた。わざわざ車を運転して、あるいは電車に乗って、小さい子どもを連れて来て、お金を払って楽しんで帰る。その行動を選んでもらえるということに、イベントの魅力があると思っています。

自宅でアンパンマンのアニメを見せるだけでもいいわけなのに、わざわざお金をかけて来てくれる。それによって商業施設がきちんと売り上げを立てて、経済が回っていく、そのほんの少しのお手伝いができているというのは、やっぱり嬉しいですよね。何万人って来てくれると、自分の作ってきたものが世間に受け入れられて喜ばれたんだって思えて、次も持ってきたいなという糧になります。

コロナ明けバブルと新展開

コロナの間はずっと何もできなかったんですけど、明けてから途端に受注が増えて。それが夏休みのイベントに重なって、もうしっちゃかめっちゃかになってしまいました。そのバタバタもだいぶ落ち着いてきたので、去年は別事業でバーを開店したりもして、少しずつ視野を広げているところです。

 

夢は「若い力が自分の意思でつくる会社」

海外展開とチームの継承

今後の目標としては、まず台湾やタイといった海外でもこういったイベントを展開できればいいなと思っています。そういった国で子ども向けのイベントをするのが有効だということが、だんだんわかってきているので。

そしてもう一つは、このイベントを面白いと感じてくれて、自分で作ってみようという希望を持った若い人たちに入ってきてもらいたい。私が今まで作ってきたものが継承されて、今の時代に合った形のものが若い人たちからどんどん展開されるような、そういう会社を作っていきたいんです。自分の意思で動いて、新しいものを生み出しやすい会社作りをしていきたいと思っています。

編集後記

林社長のお話を聞いて、一番印象に残ったのは「誰もやらないことをやる」という言葉です。ビジネスの世界では「市場を調査して需要を見極める」という話をよく聞きますが、林社長はむしろ、誰もいない場所に踏み込むことで唯一無二のポジションを築いてこられました。昭和レトロ展のエピソードは特に刺激的で、競合がいないからこそ問い合わせが集まるという逆転の発想は、就活や起業を考える私たちにとって大きなヒントになると思います。また、やんちゃな学生時代の経験がバンド仲間との人脈やイベント制作の感覚につながっているというお話も、「無駄な経験はない」と改めて感じさせてくれました。目の前のことに一生懸命取り組むことの大切さを、57年の人生から教えていただいた気がします。