インタビュー

結婚式場じゃない選択肢を、まちの中に。「IINDA」が目指すローカルセレブレーションの未来

PROFILE
MAW株式会社 代表取締役社長
星野大輔

とりジャンで最後まで残る側だった

いじめを受けてきた小中高時代

チームを決めるとりジャン、ご存じですか。リーダーがじゃんけんし合って、勝った順にメンバーを選んでいくあれです。私はずっと、最後の方まで残る側の人間でした。

身長は183cm あるのに運動神経は悪い。かといって勉強ができるわけでも、際立って面白いわけでもない。小中高と野球部に所属しながら、ちゃんといじめも受けてきた。ヒエラルキーで言えば、全然高い方じゃなかったですね。

ウエディング業界が人生を変えた

友人の一言が人生を変えた

就職活動中、年に2〜3回話すくらいの友達と駅でばったり会って。「ウェディング業界、向いてんじゃない?」って言われたんです。「じゃあ行ってみよう」と、それが運命でした。会社説明会にいったらまんまとハマってしまいました。かっこいい経緯じゃないんですけど、これが全てのきっかけです。

入社1年目で営業ランキング1位

ただ、この業界が自分の肌に本当に合っていたんです。小中高で影と日向の間にいた人間って、自然と人の顔色を伺うようになる。知らず知らずのうちに人の感情と向き合い続けてきた。その経験がウェディングの仕事でそのまま生きた。

入社1年目で営業ランキング1位を獲って、そこからお客様と仲間に恵まれ、気づいたら30歳で執行役員になりました。ずっと負だと思ってきた過去が、生きた経験になった瞬間でした。

起業は「逃げられない状況」から始まった

副業のつもりが、気づけば法人設立

起業したのは37歳。前職でやりたかった事業のアイデアがあったんですが、会社では実現できなかった。辞めるタイミングが重なって、「転職しながら副業でやればいいや」くらいの気持ちで退職しました。安心安全が大好きな人間なので、挑戦とかそういう感じではまったくなかったです。

ところが、つながっていた経営者の先輩から「副業でこの事業、本気でやれると思ってるか」と、がっつりお叱りをいただいて。「わかった、個人事業主でやる」→「法人じゃないと意味がない」と次々と決断が連鎖して、気づけば奥さんに「ごめん、法人にする」って言ってました笑

売上1万円から、月1,000万円へ

貯金を切り崩して資本金150万円を作り、2024年8月に退職して同年11月には法人を立ち上げていました。最初の売上は1万円でした。でも今では売り上げる月は1,000万円ほどになってきています。覚悟が決まってからのスピードは、自分でも驚くくらいでしたね。このときどんな環境に身を置くかが全てを左右すると学びました。

結婚式場じゃない選択肢を、まちの中につくる

地方から式場が消えている

都内でホテルウェディングをすれば、60名呼ぶだけで500万円を超えることも珍しくない。そして地方は選択肢がさらに少ない。たとえば某結婚情報誌で秋田県に掲載されている結婚式場は7会場です。(取材当時)選択肢が少ないと何が起きるか。みんな人気の式場でやるから、建物も演出も料理も毎回似たようになる。しかも結婚式は三時間で完結してしまうから、東京から来たゲストが地方の魅力を何も知らないまま帰っていく。「やっぱり田舎の結婚式だったな」と、式場のレベルで比べられてしまう時代になっています。

「暮らしの場が、祝いの場に」

そこで私たちが作ったのが、次世代のお祝いプラットフォーム「IINDA(いいんだ)」です。コンセプトは「結婚式場じゃない、まちという選択肢が見つかる」。カフェやレストラン、旅館など、これまでカップルが選択肢に入れられなかった場所でのお祝いや、パーティーを実現するサービスです。

結婚式って、ありがとうを言いたい二人とおめでとうを言いたい人たちが集まる場ですよね。だったら結婚式場じゃなくていい、という時代がもう来ていると感じます。

「まちなか待合室」や「まちぶらギフト」で地域経済に人を流す

IINDAには結婚式場が全て箱の中で完結していた便利さを、まちの中に落としこむ取り組みを多く行っています。そのひとつに、「まちなか待合室」というコンテンツがあります。

メインのパーティー会場に向かう動線の中に、素敵なカフェや地元のお店を組み込む。お祝いの導線にまちのスペシャリティーコ-ヒーの体験を置くことで、ゲストが地域の暮らしを体感できる。東京から来たゲストが、家に帰ってから家族に「あのまちの、カフェが良かったんだよ!次の旅行に行こう!」と言ってくれるような関係人口を作っていきたい。そのため、IINDAは結婚式のサービスではなく「ローカルをリスペクトするサービス」と位置づけています。

点から面へ。街全体を祝いの場にする

「IINDA -Local」が目指すもの

さらに、今回ローンチした新サービス「IINDA -Local」は、IINDAの一つの到達点だと思っています。今まではひとつの会場を選ぶことがゴールだったけれど、これからは「ひとつのまちを見つける」ことをゴールにしたい。

具体的には、小さなパン屋さんやコーヒースタンドなど5〜6会場を同時に貸し切りにして、ゲスト80名がその会場を自由に行き来しながらパーティーを体験する。イタリアに「アルベルゴ・ディフーゾ」という、街全体を宿泊施設に見立てるビジネスモデルがあるんですが、それをお祝いに応用したイメージです。私たちはこれを「ローカルセレブレーション」と呼んでいます。

全国展開、掲載施設数は日本一へ

IINDA Localの対象は人口3万人未満のまち、またはそれに見合う地域・エリア。「暮らしの場が祝いの場に」というコンセプトで、地方全体でお祝いを受け止め、地元の人しか知らないような豊かさを体験し。そのまちのファンを増やしていきたい。

創業から1年半で全国14県に展開できています。ありがたいことに、掲載施設数でいうと今や日本一の媒体になりました。秋には16〜20県くらいにはいけるかなと思っています。

ただ、売上のスケールよりも、まず文化のスケールを目指している段階です。森さんが将来結婚するってなった時に、式場を調べる前にIINDAを見て「地元でもできるんだ」と気づいてもらえる、そういう文化を全国に作っていきたいんです。

学生へのメッセージ:3つの資本を積み上げろ

ゴールテープは今の目の前にない

一つ伝えたいのが、「ゴールテープは今の目の前にないよ」ということです。今うまくいっていなくても、学生なら何でもできる。私自身、起業したのは37歳でした。

失敗の定義って何でしょうか。誰かにリードされた、誰かに置いていかれた、それは気にする必要がない。自分の人生はずっと長いので、もっと先に目を向けてほしいと思います。

行動が「経験資本」と「つながり資本」を生む

もう一つは資本の話です。NISAで積み立て投資をしている人も多いと思いますが、資本は金融資本だけじゃない。「経験資本」と「つながり資本」の三つがあると思っています。

できるだけ早くいろんな経験を積んだ人が、次のチャンスをつかめる。誰かとつながっていたから、次はさらに大きい人とつながれる。この経験とつながりの源泉は、行動です。

学生のうちにかける数字なんて何もない。1×1は結局1です。でも行動で経験とつながりを1から10、10から100と上げていけば、最終的に掛け合わせる時に大きなビジョンが描ける。何も持っていない人間が信用されるのは、行動力しかないんです。

編集後記

星野さんのお話を聞いて、一番刺さったのは「ゴールテープは今の目の前にない」という言葉でした。就職活動や学業でつい目先の結果に一喜一憂してしまいがちですが、人生のスパンで見れば今の失敗は通過点にすぎないのかもしれません。また、「経験資本」「つながり資本」という概念は、私自身がこのメディアで社長の方々にインタビューさせていただいている経験そのものを指しているようで、思わず背筋が伸びました。IINDA が広げようとしている「街全体でお祝いをする文化」は、地域活性化の文脈でも非常に示唆に富むアプローチです。いつか自分が結婚する時には、ぜひ地元・香川で IINDA を使ってみたいと思いました。