インタビュー

「価値はあるのに伝わらない」を仕組みで変えていく

PROFILE
株式会社ユアウィル 代表取締役
木下亮雄

事業を始めたきっかけ

社会性の高い活動を支援

現在は、主にPR・マーケティングの支援を行っています。この事業を始めるきっかけとなったのは、社会性の高い活動に取り組む方々と関わる中で、「価値があっても伝わらない」という現実を目の当たりにしたことでした。当時、社会性の高い事業をされている団体を積極的に支援していた時期がありました。お客さんに「助かった」「嬉しい」と言ってもらえる場面もたくさんありました。

良いことをしていても、知られない

ただ、当時どうしても支援していた団体の認知を広げることができなかったんです。改めて調べ直したり、夜中まで企画書や資料を書き直したり、様々な手法を洗い直してやり直しました。それでもPR自体がなかなかうまくいかず、価値を届けることができない時期が続き、「向いていないのかな。もうやめた方がいいのかな」とあきらめかけていたこともありました。

PRの可能性を実感

その後、ご縁があって高齢者をサポートする会社のPRに携わる機会がありました。コロナの時期もあって、厳しい経営状況だったのですが、PRに取り組んだことで地方のテレビや新聞に取り上げられるようになり、さらに半年後には全国放送にも取り上げられるまでになりました。もちろん代表がずっと頑張っていたからこそだと思いますが、認知が広がっていく様子を目の当たりにして、PRの可能性を強く実感しました。

株式会社を設立

この経験から、事業として本格的に展開することを決めて、株式会社を設立しました。設立してからも、すぐにうまくいったわけではなく、何度も何度も失敗しました。それでも志のある人の力になりたいという思いから、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ信用を積み重ね、現在も志ある方々の挑戦を支える仕事を続けています。

他社との違い

専門家の価値を届けるPR 

一般的なPR会社は幅広い企業を対象としていますが、当社ではコンサルタント、講師といった「知識や経験そのものに価値がある方」のPRを強みにしています。これまで法人向けのビジネス誌を中心に、多くの掲載を支援してきました。そのため、一般的な企業向けPRとは異なるアプローチを採っています。

「お知らせ」ではなく「企画」で伝える

一般的なPRでは、新商品やイベントなどの「お知らせ」をプレスリリースとして発信することが中心です。一方、専門家やコンサルタントは、毎月新商品を発表するわけではありません。そこで当社では、専門知識やノウハウそのものを社会的なテーマや課題と結び付け、「企画」としてメディアに提案しています。専門性を「社会に伝わる企画」へ変えることが、私たちのPRの特徴です。

マーケティングの視点を生かす

外資系企業でのマーケティングの経験から、マーケティングを土台にPRを考えています。大切なのは、何を伝えるかではなく、「誰に、どんな価値を届けるか」を設計することです。この考え方は、一般的なPRにはあまり取り入れられていない部分だと思います。

採用支援にも応用

このマーケティングの考え方は、採用支援にも生かしています。中小企業の採用では、求職者の心理を理解し、会社の魅力が適切に伝わるように設計するだけで、応募状況が大きく変わることがあります。実際に、半年間採用が決まらなかった企業で、求職者の心理を踏まえて伝え方を見直したところ、一週間で5名の応募があり、すぐに採用につながった事例もあります。採用もまた、マーケティングとPRの視点が重要な分野だと考えています。

出版はブランディングの一つ

これまでの活動が出版社の目に留まり、ご縁をいただいて書籍を出版しました。『コンサルタント・講師のためのPR戦略』では、専門家がメディアを活用して信頼を築く方法をまとめています。本をきっかけにセミナーへ参加される方や、ご相談いただく方も増え、専門性を知っていただく大きなきっかけになっています。

大切にしている考え方

マーケティングの出発点に立ち返る

マーケティングという言葉は、プロモーションや広告、リサーチといったところを思い浮かべる人が多いと思います。ですが、本当に大事なのは「誰にどんな価値を提供するか」という、もっと上流の部分です。ここがしっかり設計されていることが、いちばんの鍵だと思っています。

挑戦を楽しむ

事業をやっていく中で感じるのは、今の時代、同じことをずっと続けていても、10年、20年と続く事業はあまりないということです。周りの変化に応じて対応しながら、小さな挑戦をどんどん重ねていくこと、そして挑戦をいかに楽しむかということを大切にしています。

支援先の思いを応援する

原動力になっているのは、支援している方々の思いや一生懸命さです。何を実現しようとしているのか、その思いをいかに応援し、実現できるかというところにやりがいを感じています。逆に、そうした思いを持っていない方たちとは、あまり一緒に仕事をすることはないかなと思います。

社名「ユアウィル」の由来

変わらない思いを込めた

会社名を決めるときは、PRや技術に関連した名前も考えました。ただ、手法や技術は時代とともに変わっていくものだと思ったんです。一方で、一生懸命な人を応援したいという思いは変わらないだろうと考えて、そのままその思いを社名にしました。ユアウィル(Your Will)は「あなたの志」という意味で、多くの人の志を少しでも実現する支援をしていきたい、という思いを込めています。

学生へのメッセージ

自由な発想を今のうちに

先日、ある大学でPRの講義をさせていただきました。自分たちのような年齢になると、考え方が良くも悪くも限られてくるんですよね。大学生は、そういうベテラン世代にはない自由な発想やインスピレーションを持っています。社会に出るとルールや組織、忖度といった制約がどうしても増えていくので、今のうちにその自由な発想をどんどん生かして、さまざまなことに挑戦してほしいと思っています。

手法より考え方を

その大学の講義では、PRの手法そのものよりも、その元になる実践的な考え方を中心に伝えました。PRの講義でしたが、プレスリリースの作成方法の話はしていません。その時の課題解決だけでなく、その先も長く活かせる考え方を身につけてほしいと思っているからです。PRの視点は、学生が就職活動や社会に出てから自分の価値を伝える場面でも役立つと考えています。手法は時代とともに変わりますが、「相手に価値を届ける」という考え方は変わりません。その考え方が、学生の皆さんの将来に少しでも役立てば嬉しいです。

編集後記

木下さんのお話でいちばん印象に残ったのは、「実力があってもまだ知られていない人がたくさんいる」という言葉です。良いものは自然に広がるわけではなく、伝わる形に整えることが必要なのだと、あらためて気づかされました。社名に込められた思いが、事業がぶれない軸になっているのも印象的でした。これから挑戦していきたい学生にとっても、たくさんヒントが詰まったお話だったと思います。